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気候変動の影響で北海道はどう変化している?|現状と将来予測
Monday, 12 August 2024
このまま気候変動が進んだ場合、さらなる変化が生じ、人間を含む生態系や農作物などへの被害拡大が予測されているのです。今回は気候変動の影響で北海道はどう変化しているのか、現状に加えて将来予測も併せて解説します。
気候変動の影響でさまざまな変化が生じている北海道
地球温暖化は、人間の活動による温室効果ガスの排出が大気中に増加し、地表の気温が上昇することを意味します。それによって起きるのが、長期的な気温や気候の変化をもたらす「気候変動」です。
北海道は気候変動の影響でどのような変化が生じているのか、詳しく見ていきましょう。
平均気温の上昇による真夏日の増加
北海道の年平均気温はさまざまな変動をくり返しながら、100年あたり1.6℃上昇しています。
(参照:北海道の気温のこれまでの変化)
上記は、北海道7地点(旭川・網走・札幌・帯広・根室・寿都・函館)を平均した年平均気温偏差の経年変化(1898~2020年、単位:℃)です。
黒線は各年の基準値からの偏差を示し、青線は偏差の5年移動平均値、赤の直線は長期的な変化傾向を示しています。基準値は1991~2020年の30年平均値となっています。
図のように、変動をくり返しながらも北海道の年平均気温は上昇傾向にあります。2023年の夏は札幌市で1876年からの観測史上最高の36.3℃を記録したほか、道内では38日連続30℃を超える真夏日となり、記録を更新しました。また、札幌市では35℃を超える猛暑日も一夏で3回を数えました。
(参照:北海道の気候変化について)
雨の降り方の変化
北海道では雨の降り方が変わってきています。1時間の降水量30mm以上の短時間強雨の発生率が、30年前に比べて約1.7倍に増えているのです。2009年以降の10年間では、年間降水量の平均を上回る年が続いているといいます。
ただし、年ごとの変動が大きいため長期変化を捉えるには今後の観測データの蓄積が必要だとされています。
2023年夏には、北海道の遠軽町生田原付近で1時間に約100mmの記録的な短時間強雨がありました。集中豪雨の頻度が長期的に発生する原因には、温暖化による気温の上昇で大気中の水蒸気が増加しているからと考えられています。
(参照:北海道の短時間強雨のこれまでの変化)
(参照:地球温暖化とのかかわり)
積雪量の変化
北海道は気候変動の影響で積雪量が減少傾向にあります。一冬に最も多く降り積もった雪の深さを測る「最深積雪」は、1962年以降観測し続けている「稚内・留萌・旭川・札幌・岩見沢・寿都・江差・倶知安」の8地点の平均で、10年あたり約4%の割合で減少しています。
ただし、最深積雪量に関しても年ごとに変動が大きいため、長期的変化を調べるには今後のデータの蓄積が必要とされています。
エゾシカの増加
温暖化による気候変動の影響で積雪量が減少し、エゾシカが以前に比べて生息しやすい環境になった結果、個体数の増加が見られています。
阿寒地域で10年以上続けてきた生態調査によれば、初夏に生まれたエゾシカの子どもはその年の冬から春にかけて自然死してしまうケースが多いといいます。積雪によって行動が制限され、エサを得られないからです。
しかし、昨今は温暖化で積雪期間が短いため、エゾシカの子どもの自然死が見られない年もあるといいます。
またエゾシカの分布も広がってきており、その地域の生態系や人々の生活、作物への被害が拡大し問題になっています。
気候変動が進んだ場合の北海道の将来予測
このまま気候変動が進んだ場合、北海道はさらなる変化やリスクが伴うと予測されています。ここでは北海道の将来予測を見ていきましょう。
約5℃の気温上昇
現状程度の温暖化対策を続けていても、温室効果ガスが高いレベルで排出され続けた場合、北海道の年平均気温は20世紀末に比べて約5℃上昇すると予測されています。季節別で見てみると、冬の上昇度が一番大きいと考えられています。
真夏日・熱帯夜の増加
温室効果ガスが高いレベルで排出され続けた場合、真夏日が年に25日程度に増え、これまでほぼなかった熱帯夜が年に10日以上発生すると予測されています。
2023年夏の状況からしても既に38日連続で真夏日を更新していて、このまま気候変動が進めば真夏日や熱帯夜が予測を上回って増えていくとも考えられるでしょう。
上記のほかにも、1日あたり100mm以上の大雨や1時間あたり30mm以上の激しい雨が、毎年のように降ることで降水量が増加すると予測されています。
また、気候変動の影響によって収穫量が増える農作物と、病害が多発し品質が低下する農作物が出てくるとも考えられています。
北海道も気温が上昇!気候変動対策は適応と緩和がポイント
寒い印象が強い北海道でも気候変動の影響で気温が上昇し、猛暑日や短時間強雨の日が増えるなど環境が大きく変化しています。これ以上温暖化が進むと、人々への健康リスクや農作物への被害、生態系のバランス崩壊が広がりかねません。
気候変動はすぐには止められないため、変化した環境に適応しながら緩和する対策が重要です。気候変動に適用しつつも緩和していけるよう、一人ひとりが温室効果ガス(二酸化炭素)削減に取り組んでいきましょう!
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