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ラッコが気候変動の抑制に貢献する?!その理由とは
Tuesday, 31 October 2023
今回はラッコが気候変動の抑制に貢献するといわれる理由や、ラッコが絶滅危惧種に認定された理由を併せて解説します!
ラッコが気候変動の抑制に貢献する理由
ラッコが気候変動の抑制に貢献するといわれる理由には、ラッコの好物であるウニが深く関係しています。気候変動を抑えることとどういう関連性があるのか、詳しく見ていきましょう。
ラッコは二酸化炭素を吸収する海藻を守る
海藻は海の中で森のように広がり、二酸化炭素を吸収してくれるため、気候変動の抑制に欠かせない存在です。
しかし、その重要な役割を担う海藻を食べてしまう生物がいます。それがウニです。ウニが海藻を食べてしまい、海藻が激減した海では二酸化炭素を吸収する力が弱まってしまいます。
そこで救世主となるのが、ウニを捕食するラッコです。ラッコは体力を維持するだけでも、1日に体重の4分の1ほどのエサをとる必要があるといわれています。そのため、ウニを食べる量も非常に多いのです。
ラッコがウニを食べることによって、海藻は守られ、海中の二酸化炭素を吸収する力が維持できるのです。
ラッコが消えたら海藻を食べるウニが増え過ぎてしまう
ラッコが生息しなくなると、その海域ではウニが増え過ぎてしまい、結果的に海藻が壊滅状態になります。海藻が激減してしまうため、海中には大量の二酸化炭素が残ってしまいます。
しかしラッコが生息している海域では、海藻がウニに食べられた海域に比べて12倍もの二酸化炭素を吸収しているといいます。ラッコはそれだけ二酸化炭素を吸収する海藻をウニから守っているのです。
ラッコがウニをたくさん食べることで、海藻の持つ二酸化炭素を吸収する役割が維持できます。こうした理由から、ラッコは気候変動の抑制に貢献しているというわけです。
(参照:ウニを食べるラッコ、CO2削減に貢献)
気候変動に関わるラッコが絶滅危惧種に?!
ラッコの存在が気候変動の抑制に貢献することがわかりましたが、そんなラッコが今、個体数の激減によって絶滅の危機に瀕しています。2002年に国際自然保護連合(IUCN)によって、絶滅危惧種に認定されました。
日本においても、米国からのラッコの輸入が禁止されたため、国内で飼育されているラッコは2023年3月時点で3頭のみ。この3頭のラッコも高齢や血縁関係のため、繁殖は不可能な状況といわれています。
ラッコの個体数が激減した理由
では、なぜラッコの個体数は激減してしまったのでしょうか。
毛皮を目的とした乱獲
ラッコの個体数が激減した理由のひとつが、毛皮を目的とした乱獲です。ラッコの毛皮は毛の密度が高くて厚いため、断熱性に優れる特徴があります。その毛皮を目的として、18世紀以降多くのラッコが殺され、19世紀末には絶滅寸前まで減少してしまったのです。
そのためラッコが泳ぐ姿はほぼ見られなくなり、1911年にようやく保護の動きが始まったとされています。
(参照:ラッコが消えれば海が死ぬ――たった一種の絶滅が招く生態系の崩壊)
石油の流出
ラッコの減少には石油の流出も大きく関わっています。1989年、アラスカ沖で発生したエクソン・バルディーズ号原油流出事故では、推定3000匹のラッコが死んでしまったといいます。
石油流出事故を防げていれば、ラッコの個体数もここまで減少していなかったかもしれません。
(参照:バルディーズ号事故の生態系被害額の算定)
シャチによる捕食
シャチによる捕食もラッコが減少している理由に挙げられます。アラスカに生息するシャチはもともとアシカやクジラを捕食していました。
しかし、アシカやクジラも人間の乱獲によって減少し、シャチは代わりにラッコを捕食するようになったのです。ラッコはシャチからも狙われるようになり、減少していったと考えられています。
(参照:ラッコの激減で鳥を食べるワシが急増)
気候変動の抑制に貢献するラッコを守るためには
ラッコは、二酸化炭素を吸収する海藻をウニから守ります。それによって気候変動の抑制に貢献できるといえるでしょう。
しかしラッコは絶滅危惧種に認定されており、個体数が減少しています。ラッコを守るためには、石油の流出事故を起こさないことや、有害な化学物質などを流さないようにし、きれいな海を保つことも重要です。
気候変動を遅らせてくれるラッコを守るためにも、海洋環境を汚さないような行動を心がけていきましょう。
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