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SDGs達成へ向けた観光業の挑戦|世界観光倫理憲章に基づく取り組み
Wednesday, 30 April 2025

こうした課題を解決して持続可能な未来を目指すために、SDGsが掲げられ、観光業においても達成に向けた取り組みが求められています。特に注目されているのが世界観光倫理憲章に基づく取り組みです。
今回はSDGs達成へ向けた観光業の挑戦として、世界観光倫理憲章に基づく世界各国の取り組みをご紹介します。
SDGsの目標と世界観光倫理憲章との関連性
SDGs(持続可能な開発目標)と、世界観光倫理憲章は、観光業が持続可能な発展に貢献するための重要な枠組みを提供しています。
観光業が特に貢献できるとされるSDGsの目標は、SDGs目標8「働きがいも経済成長も」、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の4つの項目です。
一方、世界観光倫理憲章は、観光業がもたらす環境や社会への悪影響を最小限に抑えつつ、観光を最大限に発展させていくことを目的としています。
この指針とSDGsの目標には、「文化遺産の保護」、「環境保全」、「経済成長と雇用創出」といった共通点があります。これらの共通点から、観光業はSDGsの達成に向けて重要な役割を果たすと期待されており、世界観光倫理憲章はその指針として機能しています。
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持続可能な観光を目指す世界各地の取り組み事例
観光業はSDGsの達成に向けて世界観光倫理憲章に基づいた取り組みを行っています。
以下の3つは主軸となる取り組みです。
・環境保護と観光業の調和を図る
・地域社会への貢献と観光の多様性
・持続可能な観光施設の運営
ここでは持続可能な観光を目指す、世界各地の取り組みを見ていきましょう。
<エコツーリズムの聖地「コスタリカ」の自然保護と観光の共存>
コスタリカは「エコツーリズムの聖地」と呼ばれ、国土の約25%を自然保護区に指定しています。特にモンテベルデ雲霧林保護区では、ガイド付きツアーを実施しており、訪問者は森林を散策し、生態系への理解を深められます。
これらのツアーは地域のエコロッジや地元ガイドによって運営されており、観光収益が地域経済や環境保護活動に直接還元されているのが特徴です。
(参考:https://ecoliving.jp/article/ecotourism-globalspot-top5/
https://ecotourism-world.com/jp/costa-rica-as-holy-place/)
<熊本県阿蘇市の草原保全と観光の融合>
熊本県の阿蘇市では「千年の草原」と呼ばれる自然資源を保全しつつ、観光活用を図っています。
具体的な取り組みとして、電動アシスト付き自転車で阿蘇山の原野や作業道路を走行する草原ライドや、地域特産の「あか牛」を楽しむバーベキューなどのアクティビティーを提供し、観光収益の一部を草原保全に活用する循環モデルを構築しています。
また、宿泊施設のリニューアルや商店街の改修、公共交通機関の整備にも取り組み、地域全体で観光の質を向上させているのが特徴です。
(参考: https://www.asocity-kanko.jp/activity/cycle/)
<知床の旅行者を取り込んだ環境保全への貢献>
北海道の東部に位置し、世界遺産として知られる知床では、豊かな生態系と美しい自然景観を守るために、旅行者を取り込んだ取り組みが行われています。
例えば、旅行者が直接的に環境保全活動に参加できる、ビーチクリーンや植樹活動などのボランティアプログラムです。短期間の旅行でも参加可能で、地域の自然環境保全に貢献できます。
また、知床では自然環境を守るためのルールやマナーが定められており、指定された遊歩道を歩く、野生動物に餌を与えない、ごみを持ち帰るなどの基本的なマナーを守ることが重要視されています。
(参考:https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/press/khozen/pdf/siryou_1.pdf
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001595025.pdf)
<京都丹波高原国定公園内の美山町の地域活性化>
京都丹波高原国定公園内の美山町では、かやぶき屋根の伝統的な家屋が保存され、観光資源として活用されています。地域住民は、観光ガイドや宿泊施設の運営に携わり、地元の雇用を創出しています。
また、地域の伝統技術や農業、狩猟、建築などの自給自足の体験、かやぶきの里の自然環境を学ぶ体験プログラムなども導入されており、観光客と地域社会の交流が促進されている点もポイントです。
(参考:https://miyama-experience.com/
https://miyamanavi.com/sightseeing/kayabuki-no-sato)
<広島県尾道市の空き家再生プロジェクトによる地方創生>
広島県尾道市の空き家再生プロジェクトを通じて観光振興と地方創生を推進しています。この取り組みは、地域の歴史的建造物や空き家を再生し、新たな価値を創出することで、地域活性化を図るものです。
観光資源として生まれ変わった空き家の中には、特産の柿を用いたワークショップやカフェなどで年間を通じて観光客が訪れる渋柿工房や、明治時代の町屋を再生した宿泊施設などがあり、古民家暮らしが体験できるゲストハウスとして海外観光客からも注目されています。
(参考:https://www.city.onomichi.hiroshima.jp/soshiki/33/41046.html)
<沖縄でサステナブルな運営に取り組む宿泊施設>
沖縄には持続可能な観光施設の運営に取り組む事例が多数あります。例えば、サステナブルを追求する宿泊施設の取り組みです。
雑排水を海に一切流さないというホテルでは、中水システムを導入し、使用された水道水は浄化槽に流れ、真水に変えてからトイレの水などに再利用しています。
また、ビーチへの日暮れ以降のサーチライトは消灯し、ウミガメの産卵や孵化、その他の生き物に配慮しています。さらに、空調による環境負荷を軽減するため、窓ガラスに断熱材を貼り付けるなどし、重油の使用量を削減している点もポイントです。

SDGs達成には観光業や観光客の責任ある行動が鍵!
文化遺産の保護や環境保全、経済成長と雇用創出などの観点から、観光業はSDGsの達成に重要な役割を果たすと期待されています。
観光業は世界観光倫理憲章に基づき、環境保全との調和や地域社会への貢献、持続可能な観光施設の運営などを中心とした取り組みを推進中です。観光業や観光客の責任ある行動が、持続可能な観光と未来を築く鍵となるでしょう。
