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2050年にカカオが絶滅する?チョコレートの甘くない未来図
Friday, 03 December 2021
(参照:カカオの木が30年以内に絶滅する可能性 深刻な地球温暖化が影響)
カカオが絶滅すると言われるその理由とは?
カリフォルニア大学とアメリカの大手食品会社の共同研究によると、2050年までにカカオの木が絶滅する可能性があると言われています。一体なぜそのような危機に陥っているのでしょう。まずは、カカオが絶滅すると言われる理由について見ていきましょう。
〈地球温暖化による生産地へのダメージ〉
世界のカカオ豆のおよそ70%以上は、ガーナとコートジボワールで栽培されています。カカオの生育条件は非常に厳しく、平均気温27℃以上、湿度が70%~100%で降雨量が年間2000mm以上であることなど、限られた環境でしか栽培できません。
しかし、これらの産地では地球温暖化によって土地の乾燥が進み、カカオの生育が妨げられているのです。また、今後30年間で地球の温度は2℃上昇するという見通しが研究で明らかになっています。それはつまり、カカオの産地を壊滅に導く恐れがあるということ。
カカオを生産する場所が無くなり、結果としてチョコレートが食べられなくなると言われているのです。
〈病気と害虫によってカカオの木が生育不可能に〉
そもそもカカオの木はとても繊細で、特に病気に弱いという特徴があります。国際ココア機関は病気と害虫の影響でカカオの木が生育不可能になり、世界のカカオ生産の30~40%が失われたと報告しました。
ガーナやコートジボワールが位置する西アフリカでは、温暖化による洪水や干ばつ、暴風など自然災害の影響で、カカオの病気がさらに悪化したと言われています。
こうしてカカオの木が失われることで、カカオで生計を立てる数千万人の生活も脅かされているのです。
(参照: The Race to Save Chocolate)
〈チョコレートの需要が高まり供給が追いつかない〉
カカオの栽培状況は厳しくなる一方、ここ数年でアジアのチョコレート需要が急増しています。カカオの生産量が減っているにもかかわらず、世界の消費量は増えているのです。
つまり需要と供給のバランスは既に崩れており、チョコレートの生産が世界の需要に応えられなくなる日も近いと言われています。
普段何気なく食べているチョコレートですが、このようにカカオの生産危機によって突然世界から消えてしまうかもしれません。
世界のチョコレート不足を回避するために
カカオの木の絶滅を防ぐために、既に世界ではさまざまな研究が始まっています。
例えばカリフォルニア大学では、カカオの遺伝子編集を行い、気候変動にも対応できるカカオの品種改良を目指して研究が進められています。カカオ豆を残すだけでなく、新たに丈夫なカカオの木を誕生させることで、チョコレート不足を回避するという考えです。
また、1600人の農業従事者が加盟する団体では、チョコレート不足を回避するために遺伝子組み換え作物(GMO)の推進が必要であるという意見書を発表しました。GMOは以前にもブラジル原産のキャッサバで世界中から高く評価されたという事例があります。
GMOは干ばつや害虫にも強く、農薬の使用を減らしたり、生産量を増やしたりといったメリットが考えられます。そのため、より効率良く農家の利益を伸ばすことができるでしょう。一方で、GMOは人間の健康を害する恐れがあるのではという不安をもつ消費者も少なくありません。しかしこれに対しては、米国アカデミーやアメリカ科学振興協会、欧州委員会などが「GMOは人間の健康を損なわない」とはっきり述べています。
その他にもアメリカの大手食品会社は、2050年までに二酸化炭素排出量を60%削減するプロジェクトに10億ドルを出資しました。世界ではカカオの絶滅を避けるためにあらゆる取り組みが進められているのです。
おいしいチョコレートとカカオを栽培する人々の暮らしを守り続けるために
いつも私たちの身近にあるチョコレート。特にバレンタインデーには数々のチョコレート商品が売り場を埋め尽くしていますよね。そんな光景を見ていると、チョコレートが食べられなくなる日が来るとは想像がつかないかもしれません。
しかし、地球温暖化によって干ばつや洪水などの自然災害が増え、カカオの危機は現実になっています。ひとたびカカオが絶滅してしまえば、チョコレートが食べられなくなるだけでなく、カカオを栽培している人々は農場や仕事を失い、生活ができなくなるでしょう。
貧困問題にも大きく影響してくるカカオの絶滅危機問題。未来までずっとおいしいチョコレートが食べ続けられることに加え、カカオの栽培を支える人々の暮らしが豊かに続くように、今私たちにできることを一緒に考えてみませんか。