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BLOG -Circular Economy and Environment

気候変動の要因となる牛のゲップから出るメタンガスは減らせる?

Friday, 12 May 2023

気候変動は、地球温暖化によって引き起こされる気象の変化のことを指します。その温暖化を進めている主な原因は化石燃料の使用など人間の活動ですが、もうひとつ問題視されていることがあります。それは牛のゲップによるメタンガスの発生です。

メタンガスは二酸化炭素(CO2)よりも温室効果が高いといわれています。しかし最近では、問題を改善するべく牛から発生するメタンを減らす研究が進められているのです。

そこで今回は、「気候変動の要因となる牛のゲップから出るメタンガスは減らせるのか?」をテーマに研究や対策について解説します!

気候変動を引き起こす温暖化の原因はCO2と牛のゲップ?

国連の気候変動に関する政府パネル(IPCC)は「人間が地球を温暖化させてきたことは疑う余地がない」としていますが、もうひとつの温暖化の原因として問題視されているのが牛のゲップから排出されるメタンガスです。

世界には15億頭の牛がいて、毎日ゲップをしています。体重が約600kgの牛の場合1日に300リットル、餌をよく食べる牛なら1日に約600リットルものメタンガスを排出しているのです。

また、日本の農林水産分野で排出される温室効果ガスの量は全体で約4,747万トンですが、そのうち約756万トンが牛などの家畜によるゲップから排出されたメタンガスだと考えられています。

また世界全体でみると、家畜のゲップ由来のメタンガスは温室効果ガス排出量の4%を占めています。メタンガスは二酸化炭素(CO2)の約25倍の温室効果があるといわれており、脱炭素社会を目指す上でメタンガスの排出を抑える取り組みは必要不可欠なのです。

(参照:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書)
(参照:温室効果ガス(GHG)排出の現状)
(参照:牛のげっぷと地球温暖化)

気候変動対策のために!牛から出るメタンガスを減らす対策とは

牛のゲップが温暖化や気候変動の大きな要因と聞くと、まるで牛を悪者扱いしているように感じるかもしれません。しかし牛が悪いわけではなく、家畜として育てている人間に責任があります。

牛を悪者にしないために、牛のゲップによるメタンガスを減らそうという取り組みが始まっています。

ここからは牛のゲップによるメタンガスを減らすためにどんな対策がとられているのか、見ていきましょう。

メタンの発生を抑える餌の研究

北海道大学と企業による共同研究で、カシューナッツの殻から抽出した液体を餌に混ぜて食べさせることで、牛の胃でつくられるメタンの量が減少し、ゲップのメタンガスが2割減ることがわかりました。

カシューナッツの殻から抽出した液体が配合された餌はすでに販売されています。また、オーストラリアの研究では、乾燥させた「カギケノリ」という海藻を餌に少量混ぜると、こちらも牛の胃でつくられるメタンの量が減少し、ゲップから出るメタンの量を9割抑えられると報告しています。

メタンの発生を抑える餌の研究は各国でさらに進められていくでしょう。

(参照:カシューナッツ殻液のすすめ)
(参照:牛も脱炭素の時代!)

メタンガスの発生が少ない牛の研究

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)では、メタンガスの発生が少ない牛の研究に取り組んでいます。

飼育現場で専用の機器を使い、牛から出る二酸化炭素やメタンガスの量を測定したところ、牛によってメタンガスの発生量に違いがあることを発見しました。

同じ量の餌を食べたとしても、メタンガスの発生が多い牛と少ない牛がいるのです。その理由は、胃の中に存在する細菌のタイプの違いにあるということがわかりました。

メタンガスの排出量が少ない牛が持つ細菌の特定ができれば、この細菌を別の牛の胃で増やしたり、細菌を多く持つ牛を交配したりできるとして期待が高まっています。

農研機構では、牛のゲップから排出されるメタンガスの量を2030年までに25%、2050年までに80%削減を目指しています。

(参照:牛も脱炭素の時代!)

食肉の消費を減らすことも気候変動を抑える対策のひとつ

牛のゲップから出るメタンガスを抑える研究が進められている中、私たちにできることは何でしょうか。それは、肉の消費を今より少し減らすことです。

なぜなら、世界の肉の生産量は2000年からの20年間で2倍に増加し、なお増加を続けると予測されているからです。肉の生産・消費が増えるということは、それだけ畜産業による環境負荷も大きくなると考えられます。

メタンガスの発生が少ない牛の研究が進められているとはいえ、世界の肉の消費量が増え続ければ、温暖化を抑えることは難しくなってくるでしょう。

肉を多く消費している先進国の人々が肉の消費を半分に減らせば、畜産業による環境負荷も軽減できます。

週に一度肉を食べない日をつくる、「ミートフリーマンデー」を実践するのもおすすめです。メタンガスの発生が少ない牛が増えるのを期待しつつ、自分にできる気候変動対策に取り組んでいきましょう。

(参照:(201)ヒトはどこまで肉を作り、食べるのか【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】)

あわせて読みたい: 気候変動が野菜に及ぼす影響|農作物を守るための対策とは?

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