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世界で最もサステナブルな企業100社に選出!日本の製薬会社の取り組み
Monday, 07 July 2025

今回は日本でトップのサステナブル企業に輝く、製薬会社の取り組みを解説します。
日本の製薬会社が世界で最もサステナブルな企業100に選出された背景
2025年「世界で最もサステナブルな企業100社」に選出された日本の製薬会社は、9回目の選出であり、持続可能性への取り組みが国際的に高く評価されています。
同社は「ヒューマン・ヘルスケア」を理念に掲げ、医薬品アクセスの向上や、顧みられない熱帯病(NTDs)への取り組み、環境保全、ガバナンス強化など、持続可能な社会の実現に向けた多角的な取り組みを行っています。
医薬品アクセスの向上:20億人への医療提供を目指して
世界では約20億人が必要な医療を受けられず、必要な医薬品を入手できない状況にあります。その背景にあるのが、貧困や医療インフラの不足などです。
この課題に対し、同社は政府、世界保健機関(WHO)、NGOなどと連携し、医薬品アクセスの改善に取り組んでいます。ここでは同社の官民連携による、医薬品アクセス改善の取り組みを見ていきましょう。
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<インドにおける官民パートナーシップ>
同社のインドの子会社は、南アジアを拠点とする大規模な医療企業グループと連携し、アルツハイマー病やうつ病に関する疾患教育、検診、診断、治療のアドヒアランス改善プログラムを開発しました。これにより、患者の理解を深め、受診・受療機会の拡大を図っています。
<グローバルヘルス技術振興基金への参画>
同社は、日本政府や他の製薬企業などと共に、グローバルヘルス技術振興基金を設立しました。この基金を通じて、顧みられない熱帯病(NTDs)やマラリアなどの感染症に対する新薬開発を推進しています。
<国際NGOとの連携>
同社は国際NGO「難民を助ける会」と協力し、スーダンにおける感染症対策や給水設備の整備、衛生啓発活動を支援しています。また、リンパ系フィラリア症(LF)の制圧に向けて、WHOの制圧プログラムを支援し、治療薬の無償提供をおこなっています。

環境への取り組み:脱炭素社会と循環型社会の実現
同社は、持続可能な社会の実現に向けて、脱炭素社会と循環型社会の構築に積極的に取り組んでいます。以下に、具体的な環境施策をご紹介します。
<脱炭素社会への取り組み:CO2排出削減と再生可能エネルギーの導入>
・ CO2排出削減目標
同社は温室効果ガスの排出削減に向けて、以下の目標を掲げています。
- 2030年までにスコープ1およびスコープ2のCO2排出量を2019年度比で55%削減
- 2040年までにスコープ1およびスコープ2のカーボンニュートラルを達成
これらの目標は、科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi)から承認を受けています。
・再生可能エネルギーの導入
同社は再生可能エネルギーの導入を加速させるため、以下の取り組みを行っています。
- 2030年までに全事業所の電力を100%再生可能エネルギーに切り替える目標を設定
- 2021年9月には、再生可能エネルギー電力使用100%を目指す国際的イニシアチブ「RE100」に加盟
これらの取り組みにより、脱炭素社会の実現に向けて着実に前進しています。
(参考:https://sustainablejapan.jp/2024/02/29/eisai-2030-sbt-2050-net-zero/99976
https://www.mitsui.com/solution/contents/solutions/re/39)
<循環型社会への取り組み:廃棄物のリサイクルとゼロエミッションの達成>
・廃棄物のリサイクル推進
同社は、廃棄物の適正処理と資源循環の取り組みをグローバルに推進しています。
- 廃棄物発生量削減、リサイクル率向上、最終埋め立て量削減、有害廃棄物削減に向けた取り組み
- 廃棄物の内訳としては、原薬等の生産に使用する廃油(有機溶媒)や医薬品の包装材料に用いるプラスチックおよびガラスくずなどがあり、これらのリサイクルを推進
・ゼロエミッションの達成
循環型社会の実現に向けて、以下の目標を掲げています。
- 最終埋め立て量と廃棄物発生量の比を1%以下とするゼロエミッションの達成
- 2023年度の最終埋め立て率は0.23%で、ゼロエミッションを16年連続で達成
上記の取り組みにより、同社は資源の有効活用と環境負荷の低減を実現しています。

サステナビリティーに関するイニシアチブと加盟団体への参加
同社は国際的なサステナビリティ・イニシアティブや団体への参加を通じて、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する取り組みを強化しています。以下は参加している主なイニシアチブとその概要です。
<国連グローバル・コンパクト(UNGC)>
同社は2017年12月に国連グローバル・コンパクトへの支持を表明しました。UNGCは、企業が人権、労働、環境、腐敗防止の4分野における10原則を支持し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組みです。
同社はこれらの原則を企業活動に取り入れ、サステナビリティーの推進に努めています。
(参考:https://www.eisai.co.jp/sustainability/management/organizations_initiatives/index.html)
<気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)>
2019年6月、同社はTCFD提言への賛同を表明しました。TCFDは、気候変動が企業の財務に与える影響を開示するための枠組みを提供する国際的なイニシアチブです。
気候関連リスクと機会を評価し、戦略的な対応を進めています。
(参考:https://www.eisai.co.jp/sustainability/environment/climate-countermeasure/tcfd-disclosure/index.html)
<製薬業界サプライチェーンイニシアチブ(PSCI)>
2021年1月、同社はPSCIに加入しました。PSCIは、医薬品業界におけるサプライチェーンのサステナブル調達を推進する非営利団体で、倫理、労働・人権、安全衛生、環境、マネジメントシステムの5つの分野における基準を設定しています。
同社は、PSCIの原則に基づき、サプライチェーン全体の持続可能性を向上させる取り組みを進めています。
(参考:https://www.eisai.co.jp/sustainability/society/partner/sustainableprocurement/index.html)

日本でトップの製薬会社のサステナビリティー戦略と今後の展望
同社は企業理念である「ヒューマン・ヘルスケア」のもと、医薬品アクセスの向上や環境への取り組みなど、多岐にわたるサステナビリティー戦略を展開しています。
今後もデジタルヘルス領域への進出やESG経営の強化を通じて、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指していくといえます。
私たち一人ひとりもこうした取り組みに目を向け、持続可能な未来づくりに関心を持っていきましょう。
