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パンダが絶滅危惧種でなくなる?その背景と生息環境の現状
Monday, 11 April 2022
中国においても絶滅危惧種として長年にわたり保護活動が行われてきましたが、昨年(2021年)に絶滅危惧種でなくなったことが明らかとなっています。
一体なぜパンダは絶滅危惧種から外れたのでしょうか。今回はパンダが絶滅危惧種から外れた背景や生息環境の現状をお伝えします。
パンダが絶滅危惧種から外れた背景
2021年7月、「パンダが絶滅危惧種から外れた」と中国当局から発表がありました。
中国の生態環境省自然生態保護部門のトップ、崔書紅(ツァイシュウホン)氏がジャイアントパンダの絶滅危険度を「絶滅危惧種」から「危惧種」に引き下げるとし、野生パンダの個体数が倍増したことを明らかにしました。
野生パンダの個体数は、1980年代の1114頭から2015年には1864頭まで増加したといわれています。また、保護施設で人間が管理しているパンダは2020年末に633頭に達したとされています。
中国はパンダを守るために保護活動を続けてきました。その30年におよぶ保護施策が成果をあげ、パンダの絶滅危険度が下がったのです。
しかし、専門家たちは、今回の例に対して「限定的な成功であり、パンダの生息環境が厳しいことに変わりはない」と警告しています。
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不安定なパンダの生息環境
では、専門家たちのいうパンダの厳しい生息環境とは、具体的にどのような状況なのでしょうか。
<森林破壊と生息地の分断>
広範囲の森林破壊と生息地の分断によって、野生パンダの生息域は過去の1%分の土地しかないといわれています。
森林破壊や生息地が分断されてしまう主な原因は、高速道路や貯水池の建設など、開発による工事です。約20年前の調査では、パンダの群れは18ヵ所に分かれていたといいます。
しかし、2016年には33ヵ所に細分化されていることがわかっています。そのうち、10頭以下の群れは18ヵ所。
規模の小さな群れは次々と滅ぶ恐れがあるとも指摘されており、遺伝的多様性を確保するためにも人間が各生息地を結び付ける対策を打たねばならないと専門家は指摘しています。
<植生に影響を及ぼすターキンの存在>
パンダの生息環境で、不安視されているのがターキンの存在です。ターキンはウシ科の動物で、体重は360kgほどになることも。全身を薄茶色の長い毛で覆われた、牛とシロイワヤギの間をとったような容姿をしています。
パンダの自然保護区を拡大したことで、ターキンもその恩恵を受け、生息数が増加したといわれています。ターキンの注意すべき点は、森の植生に影響を及ぼすことです。
ターキンは木の皮をはぎとって食べます。皮をはがれた樹木は害虫や病気に弱くなってしまうため、ターキンが多い場所では高い木が減少し低い木が増加するという植生の変化が起こります。
一方パンダは高い木がある竹林で子育てをする傾向があるため、ターキンによってパンダが子育てしやすい環境が減ってしまうことが懸念されています。
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<最もやっかいなイノシシの存在>
野生パンダにとってターキン以上にやっかいな相手とされているのが、中国北部のイノシシです。イノシシはターキンを超える生息数、生息範囲をもち、パンダの生息環境に影響をもたらすことがわかっています。
なぜならイノシシは、パンダの大切な栄養となるタケノコを食べてしまうからです。パンダにとって、妊娠中の栄養素としても欠かせないタケノコ。イノシシに食べられてしまっては、パンダの生息にも影響が出てしまうでしょう。
調査によると、パンダはイノシシの生息数が少ない場所で増加していることが明らかになっています。また、イノシシはブタ熱などのウイルスに感染していることも多く、パンダにも確実に伝染するだろうと専門家は述べています。
パンダが安心して野生復帰できる未来へ
パンダの個体数が増加し、絶滅危惧種ではなくなったものの、野生パンダの生育環境は不安定であり、いまだ厳しい状況であることがわかりました。施設でのパンダの保護も行われていますが、根本的な解決にはなりません。パンダが絶滅の恐れなく生きていけるようにするためには、生息地の保護が重要課題です。
地球温暖化が進めば、パンダのえさ場として不可欠な竹林が今後80年間で3分の1消失するともいわれています。ですから地球温暖化を抑えるよう対策をとることも必要です。
パンダを本当の意味で守り続けていくならば、パンダを増やすだけでなく安心して野生復帰できる自然環境を整えていくことが不可欠ではないでしょうか。