SDGsにおける倫理的取り組み「世界観光倫理憲章」とは?
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SDGsにおける倫理的取り組み「世界観光倫理憲章」とは?

Thursday, 24 April 2025

近年、観光業は世界経済において重要な役割を果たす一方で、環境破壊や文化の消費などの課題が指摘されています。こうした問題を解決し、持続可能な観光を目指すために国連世界観光機関が制定したのが「世界観光倫理憲章」です。

今回は世界観光倫理憲章の概要や、SDGsとの関連性、旅行者や企業が実践できる「倫理的な観光」の方法について解説します。

世界観光倫理憲章とは?

世界観光倫理憲章とは、観光業が持続可能かつ責任ある形で発展することを目的とし、国連世界観光機関(UNWTO)が1999年10月に採択した指針です。

 

観光が環境や歴史的遺産、社会に与える潜在的な悪影響を最小限にしながら、観光の発展を最大限に引き出すことを目的としています。

 

以下は世界観光倫理憲章に定められている10カ条です。

 

第1条 人間と社会間の相互理解と敬意への観光の貢献
第2条 個人と集団の充足感を得る手段としての観光
第3条 観光:持続可能な開発の要素
第4条 観光:人類の文化遺産の利用とその価値を増進させる貢献
第5条 観光:受入国及び受入側地域社会に役立つ活動
第6条 観光開発の利害関係者の義務
第7条 観光をする権利
第8条 観光客の行動の自由
第9条 観光産業における労働者と事業者の権利
第10条 世界観光倫理憲章の原則の実施

 

10の原則で成り立っており、観光分野における人権搾取の撲滅や自然環境の保護、労働者の基本的権利の保障などが記されています。

 

この憲章自体に法的拘束力はありませんが、各国政府、観光業、地域社会、旅行者など観光産業に関わるすべての関係者が、持続可能な観光の実現に向けて自発的に取り組む事項が示されています。

 

持続可能な観光とは、環境、経済、地域社会の3つの側面において正当なバランスが維持されていることです。

 

(参考:https://unwto-ap.org/wp-content/uploads/2021/06/GCET2021_H.pdf

https://unwto-ap.org/why/tourism-definition/)

SDGsと世界観光倫理憲章の関係 

SDGsとは国連が掲げる持続可能な開発目標です。環境問題や貧困問題など、地球が抱えるさまざまな問題の解決を目指す世界共通の目標で、17のゴールが設定されています。

 

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世界観光倫理憲章を採択した国連世界観光機関は、「観光分野は裾野が広く、SDGsのすべてと関係している」と述べています。その中でも特に貢献できるといわれているのがSDGs目標8「働きがいも経済成長も」SDGs11「住み続けられるまちづくりを」SDGs12「つくる責任使う責任」SDGs14「海の豊かさを守ろう」の4つです。

 

ここでは世界観光倫理憲章がSDGsにどのように貢献するのかを見ていきましょう。

 

<観光業の持続可能な経済成長への貢献>

世界観光倫理憲章の第5条・第9条は、SDGs目標8「働きがいも経済成長も」に深く関わっています。例えば第5条では、観光産業で働く人々の権利を保障し、公正な雇用環境を促進するとしています。

 

また第9条は、観光産業で働く人々の権利と事業者の社会的責任を明確にし、持続可能で公正な観光業の発展を目指すという取り組み内容です。

 

<観光地の文化と遺産保全> 

世界観光倫理憲章の第1条、第2条、第4条、第8条はSDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の達成に直接的に貢献しています。

 

第1条では、観光を通じて異なる文化や社会間の理解と尊重を促進し、平和的な共存を目指すとし、異文化理解の促進や地域社会内外の交流による結束の強化が求められています。

 

第2条は、観光が個人および社会全体の幸福と満足間を高める手段であることを強調している点が特徴です。観光活動による生活の質の向上や地域の活性化が重視されています。

 

第4条は、観光が文化遺産の保護と価値向上に寄与することを強調しています。また、第8条は観光客が自由に移動し、訪問先の文化や環境を尊重することの重要性が求められるといった内容です。

 

これらの条文は、観光を通じて持続可能で包括的なまちづくりを促進し、地域社会の活性化と文化遺産の保護を促進する指針となっています。

 

<責任ある観光消費> 

世界観光倫理憲章の第3条は、SDGs目標12「つくる責任つかう責任」に貢献すると考えられています。第3条で求められているのは、環境保護の推進や廃棄物削減など、資源の持続可能な利用や地域社会への配慮です。

 

観光業における持続可能な生産と消費のパターンを確立し、SDGs目標12の達成に貢献することを目指しています。

 

<海洋観光と環境保護のバランス>

世界観光倫理憲章の第3条は、海洋資源の保全と持続可能な利用を目指すSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」にも深く関わっています。

 

観光活動は、環境保護と持続可能な利用を推進し、特に海洋環境の保全に寄与するべきであると示されています。

 

海洋生態系を含む生物多様性の維持に努め、海洋資源の持続可能な利用や、海洋汚染防止を推進すべきという内容がポイントです。

 

(参考:https://unwto-ap.org/wp-content/uploads/2018/05/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%95.pdf)

世界観光倫理憲章は観光業の発展と持続可能性を両立させる重要な指針 

観光は地域経済の活性化や文化交流の促進に貢献する一方で、環境負荷や社会的課題への対応が求められています。

 

SDGsの目標達成には、旅行者、企業、政府が一体となり、倫理的な行動を実践することが不可欠です。

 

これからの観光は単に楽しむだけでなく、環境や社会への貢献を意識しながら、持続可能な形で発展させていくことが求められます。

 

私たち一人ひとりが責任ある観光の担い手として、行動していくことが大切なのではないでしょうか。

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