BLOG -Circular Economy and Environment
クジラが気候変動を抑えてくれる?脱炭素に貢献する理由とは
Wednesday, 04 October 2023
しかし最近の研究で、クジラにも炭素を貯蔵する能力があることが分かったのです。
そこで今回はクジラが気候変動をどのようにして抑えるのか、脱炭素に貢献する理由をわかりやすく解説します!
クジラはどのようにして脱炭素に貢献するの?
アメリカの研究チームによると、地球上で最も巨大な生物といわれているシロナガスクジラやナガスクジラなどのヒゲクジラ類は、膨大な量のエサを食べ、膨大な量の排せつをすることによって、小動物に比べて効率的に炭素を貯蔵し、炭素循環に強い影響を与えていると報告されています。
研究者たちが、ヒゲクジラ類の一日のエサの摂取量を調査した結果、一日16トンものオキアミを食べていることがわかりました。このとてつもない量のオキアミを食べたヒゲクジラ類の排泄物が海に広がると、それをエサとする植物プランクトンが増え、大量の二酸化炭素を吸収してくれるのです。
つまり、ヒゲクジラ類がオキアミを大量に食べるほど排泄物、そして植物プランクトンが増え、二酸化炭素の吸収量が多くなるというわけです。
排泄物には、鉄や窒素といった栄養が豊富に含まれているため、プランクトンのエサになります。
海面付近に生息するプランクトンは炭素を蓄えており、そのプランクトンをオキアミが食べ、さらにそのオキアミを魚やペンギン、アザラシ、クジラといった生物が食べることで、炭素は蓄えられる量を増やしながら循環していく仕組みです。
クジラはどのくらい二酸化炭素を吸収している?
それでは、クジラはどのくらいの二酸化炭素(CO2)を吸収しているのでしょうか。オーストラリアの研究チームによると、南洋に生息するマッコウクジラは推定1万2000頭。それが1年間で約40万トンのCO2吸収に貢献するといいます。
アメリカのチームによる研究では、クジラの個体数が増えればさらに2億トン以上のCO2を吸収できる可能性があるといい、気候変動対策に大きく貢献できるとして期待が高まっています。
(参照:マッコウクジラの「排泄物」、CO2削減に貢献=豪研究)
(参照:クジラは森林並みに大量の炭素を「除去」していた──米調査)
気候変動を抑える可能性を秘めたクジラが絶滅の危機に?!
しかし、気候変動を抑えると期待されているクジラが今、絶滅の危機に瀕しているのです。
大型クジラの13種のうち6種が絶滅危惧種、あるいは危急種に認定されています。なぜクジラの個体数が減少してしまったのでしょう。その要因の一つに、20世紀の産業捕鯨によって300万頭ものクジラの命を奪ったことが挙げられます。
その他にも漁具に絡まる被害や、気候変動の影響によるエサの変化など複数の要因が重なり、クジラの個体数の減少につながっています。
クジラが減少することでおきる海の現象
クジラが減少すると、炭素が吸収されずに海や大気に放出されてしまいます。20世紀以前では、南極海に生息するマッコウクジラは200万トンの炭素を吸収していましたが、現在では約20万トンにまで落ち込んでいるといわれています。
ヒゲクジラ類の個体数はまだ回復しきれておらず、以前ほど炭素除去を担えなくなっているのが現状です。
(参照:Whales Can Actually Help Us Fight Climate Change. Here’s How)
クジラの個体数の回復が気候変動を抑える鍵に!
商業捕鯨でクジラの数が減る以前は、クジラは全大陸の森林生態系に匹敵するCO2を吸収していたのではと、研究者たちは考えています。
クジラによる脱炭素の仕組みは、炭素を貯蔵し循環させるだけでなく海洋環境を豊かにするものです。
クジラの個体数の回復こそが気候変動を抑える鍵になり、持続可能な海洋システムにつながるとして、クジラの保護活動が進められています。
クジラの個体数を回復させるために海の環境を守ろう!
クジラの個体数を回復させるために私たちにできることは、海の環境を守ることです。海洋プラスチックや化学物質の水質汚染によって、悪影響を受けている海の生き物たちは少なくありません。
座礁したクジラの腹から大量のプラスチックごみが出たというニュースがあったことからも、影響の一端が伺えます。
クジラの個体数が回復し以前のような炭素除去ができるよう、自分にできる行動で海の環境を守っていきましょう。
(参照:クジラの胃に100キロのごみ なぜプラスチック食べる)
あわせて読みたい: 気候変動やさまざまな脅威によるペンギンへの影響