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クライメートテックの持続可能な食料生産に関する取り組み
Tuesday, 11 February 2025

気候変動の影響を緩和、または適応するための技術として、クライメートテックの食料生産分野に期待が高まっています。今回はクライメートテックの持続可能な食料生産の取り組みを解説します。
持続可能な食料生産に関するクライメートテックの特徴
そもそもクライメートテックとは、気候変動対策にフォーカスしたIT技術やシステム、ビジネスなどを指します。気候変動に関わる分野は多く、幅広い領域で展開されていますが、「持続可能な食料生産」も重要分野のひとつです。
持続可能な食料生産とは、環境負荷を減らし、長期的に安心・安全な食料の安定を確保することを指します。
クライメートテックの持続可能な食料生産の分野では、革新的技術を用いて環境に配慮した生産方法を開発したり、気候変動による影響を受けず安定した収穫量を維持できる農法を生み出したりしています。環境負荷を軽減しつつ、食料を効率的に生産するための技術や手法が特徴です。
また、食品ロス削減のためにAI技術を活用した食品管理や、廃棄物を循環利用するなどの取り組みも行っています。これらは気候変動を引き起こす温室効果ガス(CO2)排出量の削減につながっています。
持続可能な食料生産を実現するため、気候変動への「緩和、適応、対策」のあらゆる角度からアプローチしている点がポイントです。
(参考: 持続可能な農業とは)

持続可能な食料生産に関するクライメートテックの種類
持続可能な食料生産に関するクライメートテックでは、気候変動の適応に向けた品種改良や代替たんぱく質の開発など、多岐にわたる取り組みを行っています。
具体的にどんな技術や取り組みがあるのか、詳しく見ていきましょう。
<スマート農業>
スマート農業とは、ICT(情報通信技術)やAIロボットなどを活用して、農業の効率化や高品質生産を目指す取り組みです。
ドローンで作物の生育状況や病害虫の発生を監視したり、IoTセンサーで土壌の水分量や養分、温度をリアルタイムで計測したりと、作物の生育環境の整備に役立っています。
また、AIと機械学習によって収穫時期や最適な施肥のタイミングを予測することも可能です。
(参考:https://www.soumu.go.jp/main_content/000775128.pdf)
<気候適応型の品種改良>
クライメートテックでは、気候変動に強い作物を開発する研究も行っています。例えば気候変動に対応したビワの新品種開発です。気候変動を引き起こす温暖化の影響で、ビワの収穫時期は高温になりやすく、果皮障害や味の低下が顕著になっていました。
また、病害の多発によって収穫量も低下している現状があります。一方で、冬期の最低気温の上昇により、栽培適地の拡大が期待できるとして、高温による果皮障害に強く、日持ちの良いビワの品種を開発しました。
温暖化が進行しても新たなビワ産地が拡大し、供給量が増加することで豊かな食生活と農業者の所得向上に貢献するとしています。
(参考:https://www.affrc.maff.go.jp/docs/kankoubutu/RandD/pdf/kenkyu_syokai_2014_5.pdf)
<垂直農法>
垂直農法は、LED照明や水耕栽培技術を用いて室内で食料生産する方法のことで、「バーティカルファーミング」とも呼ばれています。土壌を使わず、省スペースで栽培できるため、都市部でも新鮮な作物を生産できるのが良い点です。
また、気候変動による影響を受けることなく、年間を通して安定した供給が維持できます。さらに水の使用量が大幅に削減できるため、水資源の確保にも貢献します。
グリーングロワーズのレタスも垂直農法で育てられており、いつでも新鮮でおいしい、高品質なレタスを提供中です。
(参考:https://mygreengrowers.com/blog/urbanfarming-verticalfarming/
https://mygreengrowers.com/product/lettuce/)
<代替たんぱく質の開発>
畜産業は温室効果ガスの排出量が多く、温暖化を促進させる要因のひとつと考えられています。クライメートテックでは、従来の家畜飼育に依存しない、新しいたんぱく源の開発に取り組んでいます。
以下は、代替たんぱく質の種類です。
・植物由来たんぱく質…(大豆、エンドウ豆、などを原料にした代替肉)
・培養肉…動物細胞を培養して肉を生成したもの。
・昆虫食…コオロギなどの昆虫を原料として活用した食品。
環境負荷をかけずに生産可能で、気候変動の影響による食糧危機や栄養不足にも対応できるとして期待が高まっています。
(参考:https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001949.html)
<水資源の管理>
スマート灌漑(かんがい)システムや海水淡水化技術などを活用して持続可能な水資源の管理に努める取り組みです。スマート灌漑システムとは、土壌センサーを活用して、水の必要量を自動調整するシステムを指します。
スマートフォンやパソコンでモニタリングしながら自動制御または遠隔で操作が可能なため、貴重な水資源を無駄なく使用できます。
一方、海水淡水化技術とは、海水を飲料水や農業用水として再利用する技術のことです。逆浸透膜を利用して海水を淡水化する「膜処理法」という新技術が進み、水不足の解消に役立つとして期待が高まっています。
(参考:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/forum/R2smaforum/rice/seika04.html
海水淡水化施設の挑戦「浸透圧発電」海水から電気をつくる技術とは)
上記以外にも、食品廃棄物削減のためのAIを用いた食品管理、食品廃棄物を飼料やバイオ燃料に循環利用する技術、IoTセンサーを活用したアーバンファーミング(都市型の分散型農業)の取り組みなど、クライメートテックは幅広く浸透しています。
クライメートテックの力で持続可能な食料生産は実現できる!
持続可能な食料生産を実現するには、クライメートテックの技術が重要不可欠です。持続可能な方法で生産された食品を選ぶというのは、消費者ができることのひとつです。
気候変動対策への意識を持ち、新たな視点で食品を選んでみてはいかがでしょうか。
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