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脱炭素時代の物流革命!EVトラックの現状・課題・展望を解説
Wednesday, 05 March 2025

今回は「乗り物の脱炭素への取り組み」をテーマに、EVトラックの特徴やメリット、現状や導入に向けた取り組み、展望を解説します。
EVトラックとは?
EVトラックとは、電気モーターを動力源として走行するトラックのことです。従来のトラックと異なりガソリンが不要なため、CO2排出量や窒素酸化物などの有害物質を一切排出しない特徴があります。
また、エンジンを持たないため走行中の音が非常に静かです。都市部や住宅地への配送において、騒音問題の改善も期待できます。電気はガソリンやディーゼル燃料よりもコストが低いため、長期的に見た運行コストを削減できるのもメリットです。
さらに、EVトラックは従来のトラックに比べて可動部品が少ないため、エンジン関連の修理やメンテナンスがいらず、これらのコストも削減できます。

EVトラックの現状
現在多くの自動車メーカーがEVトラックの開発に取り組んでいますが、日本を含め世界的に普及率が低いのが現状です。日本のバス製造会社の発表によると、2017年〜2022年までの5年間で導入されたEVトラックは、世界でわずか450台といわれています。
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自動車業界や運送業界で脱炭素化が求められてはいるものの、環境意識の高い大手企業や自治体が先行して導入する程度に留まっています。
短距離配送や都市内の運送業務などで少しずつ導入する動きが見られていますが、全国的な普及にはまだまだ時間を要する状況です。

EVトラックの普及が進まない理由
EVトラックの普及が進まない理由には、航続距離の短さや充電時間の長さ、販売価格の高さなどが挙げられます。それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
<航続距離が短い>
EVトラックが普及しない理由のひとつが、航続距離が短いことです。EVトラックはバッテリーから電力を供給して走行しますが、一度の充電で走行できる距離が従来のトラックに比べて短いといえます。
長距離輸送を行うためには、充電ステーションでのバッテリー充電が必須ですが、充電インフラの整備が追いついておらず、短距離での運送でないと難しいのが現状です。
<充電に時間がかかる>
EVトラックの普及率が低い理由に、充電に時間がかかるという点もあります。日本では「普通充電」と「急速充電」の2種類の充電方法があり、普通充電は約12時間、急速充電は30分ほどかかります。
ガソリン補給に比べて充電時間が長く、効率的な運行の妨げになることから、充電式のEVトラックはなかなか導入に至りません。
<バッテリーの寿命が短い>
EVトラックは充電バッテリーの寿命が短いという点も、普及率の低さに関係しています。
バッテリーは充電すればするほど劣化していく性質があるため、長距離走行が中心のEVトラックは、充電頻度も多くバッテリーの寿命が短いといえます。
バッテリーを新しいものに換えるたびにコストが発生するため、EVトラック普及に向けて寿命の長いバッテリーの開発が求められています。
<販売価格や充電設備が高い>
EVトラックはガソリンやディーゼル燃料が不要のため、運行コストは抑えられるものの、車体価格が高いという課題があります。これもEVトラックの普及率が低い理由のひとつです。
EVトラックに搭載されるバッテリーが高額であるため、製造コストが上がり、販売価格も高くなります。また、EVトラックの運用には充電設備の導入も必須です。
充電インフラの整備には多額の初期投資が必要になるため、中小企業などはコスト面が障壁となりEVトラックの普及が進まないという状況が多いでしょう。

日本におけるEVトラックの導入に向けた取り組み
都市部や短距離輸送では少しずつEVトラックの導入が進んでおり、大手運送会社を中心に新たなEVトラックの開発も加速しています。ここからは、EVトラックの導入に向けた取り組みを見ていきましょう。
<大手運送会社が電気小型トラックを約900台導入>
大手運送会社では、2030年までにEVトラック20,000台の導入を目標に掲げ、2023年9月より新型の小型EVトラックを約900台導入する取り組みを行っています。
CO2や有害物質を排出しないほか、振動や騒音が少なく、環境に配慮されているのが特徴です。2トンの積載量がありながら車幅がコンパクトで小回りが利きやすく、都市部や住宅街での配送に適しています。
(参考:https://www.yamato-hd.co.jp/news/2023/newsrelease_20230912_1.html)
<企業が協同でEVトラック経路充電の実証実験>
EVトラックの普及拡大に向け、3社協同で経路充電の実証実験を行いました。経路充電とは目的地にたどり着くまでの移動途中の充電を指します。
福岡県内で一カ月間、EVトラックの長距離輸送における経路充電の有効性や、EV運用支援アプリの必要機能、効果などを検証しました。
その後、実験結果に基づき、EV運用支援アプリの価値向上や経路充電ネットワークの拡充に取り組み、EVトラックの導入を進めて脱炭素社会の実現に貢献していくとしています。

日本におけるEVトラックの展望
経済産業省はEVトラックの使用割合を2030年度までに5%にすることを求めており、政策の強化やバッテリーの性能向上などで、今後EVトラックの普及は進むと予想されています。
脱炭素社会の実現には、従来のトラックからCO2排出量を大幅に削減できるEVトラックへの移行が不可欠です。
航続距離や充電時間などの課題を解決し、政府や企業、自治体が一丸となりEVトラックの普及が進められていくことでしょう。