BLOG -Circular Economy and Environment
気候変動が冬季オリンピックに与える影響|開催地は札幌だけに?
Friday, 01 April 2022
日本では過去に札幌で1回、長野で2回開催されました。しかし、国際的な研究チームによると、気候変動によって冬季オリンピックを開催できる地域が極めて限られてくるという予測があるのです。
今回は、この研究結果をもとに気候変動が冬季オリンピックに与える影響について詳しく解説します。
今世紀末に冬季オリンピックを開催できるのは札幌だけ?
カナダのウォータールー大学を中心とした国際研究チームは、温室効果ガスの排出量を大幅に削減できなければ、過去の冬季オリンピック開催地の中で、再び開催できるのは今世紀末では札幌のみという研究報告を発表しました。
かつて、再度開催が可能な都市は21都市あったとされており、その半数以上がフランスやオーストリアといった欧州でした。しかし、欧州のアルプス地域では、すでに地球温暖化の影響が出始めているといわれています。
また、冬季オリンピック開催都市の2月の日中平均気温を調査したところ、1920年〜1950年代は平均気温0.4度でしたが、1960年〜1990年代では3.1度、21世紀に入ると6.3度まで上昇していることがわかりました。
このまま気温上昇が続けば、かつて2回開催されたスイスのサンモリッツや、同じく2回開催のノルウェー・リレハンメルも、開催できる環境ではなくなると予測されています。
ただし、パリ協定で各国が約束した温室効果ガスの削減量を達成できれば、開催が困難になる都市は6都市にとどまるとしています。
あわせて読みたい: マイクロツーリズムとは?メリットやSDGsへの貢献について解説
人工雪での冬季オリンピック開催は可能?
「雪が降らないのであれば、人工雪で補えば良いのでは?」といった疑問が浮かんでくるかもしれません。実は、2022年の北京オリンピックでも人工降雪機300基を使い、ほとんど人工雪で競技を行いました。
北京はもともと雪が少ない地域ですが、雪が足りなければ人工降雪機で降らせれば良いという考えのもと、開催地として立候補していました。
結果的に北京オリンピックは、ほぼ全面的に人工雪で行われましたが、人工雪は天然雪に比べ、硬くて滑りやすいといった特徴を持ちます。そのため、雪上競技でけが人が続出したとの声もありました。
イギリスのラフラバー大学の研究によると、人工雪でのウィンタースポーツは、雪質が予測できず、危険度が増す可能性があると報告しています。
また、人工雪は大量の水と電力エネルギーを消費する他、雪溶けの防止対策として化学物質が使われることもあるといわれています。
人工雪を作り出すことで、より水不足を悪化させたり、地球温暖化を進めてしまう可能性があり、環境への影響が懸念されています。
このように、人工雪での冬季オリンピックの開催は不可能ではありません。しかし、環境に負荷を掛けず、選手が安心、安全に競技を行うためには、やはり天然雪での開催が望ましいといえるのではないでしょうか。
あわせて読みたい: 【こだわりレシピ】エスニック風 脂肪燃焼スープ
冬季オリンピックやスノースポーツを守るためにできること
このまま温暖化が進めば、天然雪での冬季オリンピック開催、そしてスキーやスノーボードといったスノースポーツを楽しむことすらできなくなってしまうかもしれません。
国際オリンピック委員会では、2030年二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを目指す取り組みを進めています。CO2排出量がゼロの社会、すなわち脱炭素社会を目指すためには、私たち一人ひとりが、今からできることを始めていく必要があります。
例えばスポーツを通してできることとしては、スポーツ用品を長く使い続けることや、レンタルサービスを利用するなどの工夫ができるでしょう。
また、環境に配慮した製品を選ぶのもおすすめです。加えて、スポーツ観戦時には、公共交通機関を利用し、マイボトルを持参するなどがあげられます。
こうした小さな行動の積み重ねが、やがて大きな力となり、未来を変えることにつながります。冬季オリンピックやスノースポーツを守り続けていくためにも、今できること、続けられることから始めていきましょう。