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SDGsとアパレル業界の倫理的取り組み|背景にある課題も解説
Thursday, 15 May 2025

特に、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、環境・人・社会に配慮した「エシカルファッション」が注目を集めています。
しかし、大量生産・大量廃棄の問題や不透明なサプライチェーンなど多くの課題が残っている状況です。今回はアパレル業界の倫理的な課題とそれに対する企業や消費者の取り組みを解説します。
アパレル業界の倫理的な課題とは?
アパレル業界では、倫理的な観点から労働環境問題や環境負荷、サプライチェーンの不透明性などの課題を抱えています。これらの課題について詳しく見ていきましょう。
<低賃金・児童労働などの労働環境問題>
多くの衣料品は労働コストの低い発展途上国などの国で生産されていますが、そこでは労働者が低賃金や過酷な労働条件に直面しています。
例えば、一部の工場では労働者が1日12時間以上の長時間労働を強いられ、健康を害するケースも報告されているのです。
また、児童労働も深刻な問題です。綿花(コットン)の生産大国として知られるインドでは、2020年時点で児童労働者が35万人以上おり、教育を受ける権利が侵害されています。
(参考: https://senken.co.jp/posts/fb-sustainability-ace)
<大量生産・大量廃棄、化学染料使用などの環境負荷の問題>
流行を取り入れつつ低価格に抑えた「ファストファッション」の登場により、衣料品の大量生産・大量消費が進み、その結果として大量廃棄が発生しています。衣服の製造には、大量の資源が必要です。
例えば、ジーンズ1本を作るために約7,500リットルの水が使用されます。また、製造過程で使用される化学染料や有害物質が環境を汚染し、生態系に悪影響を及ぼしています。
(参考:https://sustech-inc.co.jp/carbonix/media/fast-fashion/)
<動物虐待の問題>
アパレル業界では、動物由来の素材使用に関する倫理的な課題が指摘されています。例えば毛皮製品のために多くの動物が狭いゲージに閉じ込められ、過酷な環境で飼育されている上、残虐な方法で殺処分されています。
また、ダウンジャケットなどに使われる羽毛は水鳥から採取されますが、生きたまま羽毛をむしり取られるケースもあるとして、動物福祉の観点から問題視されているのです。
(参考:https://www.vogue.co.jp/change/article/valentino-bans-alpaca-wool)
<サプライチェーンにおける透明性の欠如>
多くのブランドが複雑なサプライチェーンを持ち、その全貌が不透明である場合が多く、労働環境や環境負荷の実態把握が困難とされてきました。
2013年4月にバングラデシュの複数の縫製工場が入居するビル「ラナ・プラザ」が崩壊し、1,132人以上が死亡し、2,500人以上が負傷する大惨事が発生しました。事故前日にビルに亀裂が生じていたにもかかわらず、操業が続行されていたといいます。
多くのブランドがどのような環境で自社製品が生産されているかを把握しておらず、労働者の安全が軽視されていたことが明らかになりました。この事故をきっかけに、業界全体での改善が求められています。

SDGs達成に向けたアパレル業界の倫理的取り組み
アパレル業界は、SDGsの達成に向けて倫理的な取り組みを進めています。各取り組みについて、具体的な内容を見ていきましょう。
<エシカルファッションの推進>
環境や人、社会に配慮したエシカルファッションを展開するブランドが増えています。例えば、生産者と公正な取引をしていることを証明する「フェアトレード」を基盤として、発展途上国の職人や農家と協力して衣料品を生産するブランドがあります。
オーガニックコットンなどの環境に優しい素材を使用することで、環境負荷の低減と労働者の生活改善を図る取り組みです。
<サステナブル素材の活用>
再生繊維や植物由来の素材を使用することで、環境負荷の低減に取り組むアパレルブランドも増えています。例えば、キノコの菌糸体と再生繊維から作られた「エコレザー」を使用し、動物由来に代わる持続可能な素材の選択肢を提供するブランドの事例があります。
また、別のブランドでは、店舗で回収したダウン製品から抽出したフェザーとダウンを100%再利用し、リサイクルダウンジャケットとして販売、資源の循環利用を推進中です。
(参考: https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/planet/clothes_recycling/re-uniqlo/product/)
<サプライチェーンの透明化>
取引履歴を暗号技術でつなぎ、取引の記録を管理する「ブロックチェーン技術」の活用や、生産から消費までの過程を追跡する「トレーサビリティ」の強化によって、サプライチェーンの透明性を高める取り組みが進んでいます。
とあるアウトドアブランドではサプライチェーン情報を提供するWEBサイトを立ち上げ、すべての契約工場のリストを公開しました。これにより、生産過程の透明性を高め、環境や労働条件に関する情報を消費者に提供しています。
<リユース・リサイクルの促進>
古着回収やリメイク、サブスクリプションサービスによるリサイクルなど、衣料品の再利用を推進するブランドの取り組みも注目されています。
例えば、製品の98%にリサイクル素材を使用し、消費者からの回収や製造工場から出る端切れを活用しているブランドの事例です。リサイクルポリエステルの使用により、石油使用量の削減にも貢献しています。
また、別のブランドでは植物由来のカポックの実を使用したダウンコートを製造するなど、リサイクル可能な製品を提供し、資源の有効活用を図っています。

持続可能なファッションの未来を目指して
アパレル業界におけるSDGsの達成は、ブランドの倫理的な取り組みに加え、消費者の意識改革の両輪で進めていく必要があります。エシカルなブランドを選ぶ、長く使える服を購入する、リサイクルに協力するなど、一人ひとりの小さな行動が持続可能な未来につながります。
今後、アパレル業界が環境や社会に配慮したビジネスモデルへと転換していく中で、私たちも「選ぶ力」を持ち、より良い未来のために行動していきましょう。
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