BLOG -SDGs and Sustainability
フランスのUrban Farming|パリに誕生した欧州最大の屋上農園
Tuesday, 22 October 2024
今回はフランスにおけるUrban Farmingの現状や、パリに誕生した欧州最大級の屋上農園について解説します。
先端をいくフランスのUrban Farming
昨今では都市で野菜や植物を育てるUrban Farmingに関心が寄せられています。農業が盛んなフランスでは市民活動やコミュニティー活動として、いち早くUrban Farmingを取り入れていました。
現在は持続可能な農業の実現を目指し、Urban Farmingの本格的なプロジェクトが多数展開されています。
特にフランス首都パリには、欧州最大級といわれる屋上農園「ナチュール・ユーベンヌ」が誕生し、都市における新しい食料供給モデルとして世界的に注目を集めています。
フランスのUrban Farmingが本格的に始動した背景
フランスのUrban Farmingが本格的に始動した理由には、都市部の人々が抱える食料供給問題があります。
世界の人口の約半数が都市に集中する現代において、都市生活者へいかに新鮮な食べ物を安定して供給できるかが、重要な課題となっています。
フランスは自国で食べ物を生産できますが、実は多くの食べ物がスペインやモロッコから輸入されたものです。その理由はフランスよりも食材の生産コストが低く抑えられるため、安価で提供できるからです。
しかし、コロナ禍で買いたい食材が手に入らなくなる経験をしたフランスの人々は、日々の食料が保障されていないかもしれないということに気づきました。
また、同時に健康意識の向上によって良質な食べ物への需要が高まり、どのように食べ物が生産されているのかを知りたいと思う人が増えたのです。
さらにスペインやモロッコからフランスに食材が輸送される平均距離は、およそ1,000kmといわれており、移動中に温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)が発生します。
環境問題の改善策としても、都市で食料を生産し消費するUrban Farmingに期待が寄せられているのです。
このように輸送にかかるCO2排出量を軽減し、環境保全や都市の安定した食料供給の実現に向けて、フランスのUrban Farmingは本格的に取り組まれるようになりました。
(参照:EAT LOCAL KOBE | 世界の都市農家インタビュー 〈3〉世界最大の屋上菜園。フランス「アグリポリス」)
(参照:街に緑を、パリのアーバン・ファーミング)
パリに誕生した欧州最大級の屋上農園を調査
ここからは、フランスの首都パリに位置するポルト・ウェルサイユの見本市会場に誕生した、欧州最大級の屋上農園「ナチュール・ユーベンヌ」の特徴を見ていきましょう。
広さは14,000㎡!サッカーフィールド2つ分
欧州最大級の屋上農園は、なんと14,000㎡!サッカーフィールド2つ分の広さといわれています。総面積のおよそ3分の1は近未来的な農園になっており、一画は市民向けの屋上菜園として活用しているのが特徴。
市民向けの菜園では1㎡の木箱が135個並べられていて、一箱ごとに近隣の契約者が育てた野菜が実っています。市民向けの菜園スペースは、9時から21時まで自由に出入りできるシステムです。
近未来的な農園スペースでは「エアロポニックス」と「ハイドロポニックス」で栽培
メインスペースでは、土を使わない2種類の水耕栽培で野菜や植物が育てられています。一つ目は円柱型の装置を使って垂直に作物を育てる「エアロポニックス」です。
竹に吊るされた円柱型の装置には複数の穴が空いていて、作物の苗をはめ込んで育てる仕組みになっています。背の高くならないハーブやイチゴなどを栽培しています。
もう一つの方法は、水平方向に育てていく「ハイドロポニックス」です。培養液を利用して育てる方法で、並べられた白い側溝には、トマト、ナス、ラズベリーなどが植えられ栽培されています。
栄養分が含まれた水がコンピューター制御によって循環されているため無駄がなく、通常の農業で使用される水の10分の1の使用量といわれています。
20~30種類の無農薬野菜を栽培
ナチュール・ユーベンヌでは20〜30種類の作物を無農薬で育てており、品種は味わいを重視して選ぶといわれています。一般的には、作物の品種を選ぶ基準は輸送に耐えられるかどうかです。
しかし、ここで育てられた野菜は近所のスーパーやレストランに卸されるため、味わいを最優先して品種を選んでいます。
隣接するカフェレストランに採れたて野菜を提供
屋上農園の隣に隣接するカフェレストランで、採れたての野菜を提供しています。ゆったり座れるテラス席や菜園の緑がよく見えるバーラウンジなど、自然が感じられる癒しの空間が魅力です。都市空間でありながら広がる空と緑に囲まれ、新鮮で美味しい野菜を堪能できます。
毎週金曜日夕方5時に実施される直販システム
近所のスーパーやカフェレストランに卸される以外にも、毎週金曜日の夕方5時には採れたての野菜が直接販売されます。
水耕栽培のため有機栽培の認証が取れませんが、その分一般的な有機野菜よりも価格が安いのが特徴です。都市住民のコミュニケーションの場としても役立っています。
フランスのUrban Farmingから持続可能な農業を学ぼう!
フランスのUrban Farmingは、都市における食料供給問題や温暖化対策として本格的に取り組まれています。革新的なアイデアと実行力で促進するフランスのUrban Farmingから学ぶことは多いでしょう。
持続可能な農業の実現に向けて、フランスのUrban Farmingの在り方をぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
あわせて読みたい: 緑化の目的やメリットとは?家庭でできる緑化活動も解説