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乗り物の脱炭素への取り組み|水素を燃料とするFCバスとは?
Tuesday, 18 February 2025

今回は「乗り物の脱炭素への取り組み」をテーマに、水素を燃料とするFCバスの特徴や走行の仕組み、現状と将来の展望を解説します。
水素を燃料とするFCバスの特徴をチェック!
FCバスとはFCV(燃料電池自動車)と同様に、水素を燃料として走行する燃料電池バスを指します。まずは、FCバスにどんな特徴があるのかチェックしていきましょう。
<水素ステーションで水素を補給>
一般的なバスは軽油を燃料としますが、FCバスは水素が燃料であるため、水素ステーションで水素を補給します。水素ステーションはFCバスに水素を供給する場所であり、ガソリンスタンドの代わりとなる施設です。
バスの車体上部に設置されたタンクに水素を供給します。外部から取り込んだ大気中の酸素と、タンクに蓄えられた水素をバス内の燃料電池に送り込み、化学反応させることで電気がつくられます。この電気でモーターを回転させ、バスが走行するという仕組みです。
水素ステーションでの水素補給は、ガソリンや軽油の給油時間とほぼ変わらず、EVバス(電動バス)の充電に比べて時短な点もポイントになります。
<二酸化炭素(CO2)を排出しない>
FCバスは、走行中に二酸化炭素(CO2)や排気ガスを出さない点が最大の特徴です。車外に排出されるのは水だけなので環境に優しく、「究極のエコカー」ともいわれています。
軽油を燃料としたディーゼルバスは、1台で年間約60トンものCO2を排出するといいます。一方、FCバスはどれだけ走行してもCO2排出量はゼロです。ディーゼルバスからFCバスに切り替えることで、CO2排出量を大幅に削減できます。
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<走行中の騒音や振動が少ない>
FCバスはエンジンを積んでおらず、発電した電気でモーターを回転させて走行するため、騒音や振動が少ない特徴があります。オートマ車でギアをチェンジする際に起こりやすい「変速ショック」を防止でき、発信や加速がスムーズです。
一般的なディーゼルバスに比べ快適な乗り心地が体験でき、車内で立っている人も安心して乗車できます。
<災害時の電力供給源としても利用可能>
FCバスには外部給電機能が備えられており、普段バスの走行に使用している電力を、災害時の電力供給源として活用できます。
現在国内のバス事業で最も多く導入されているFCバスを例に挙げると、大容量の外部給電システムにより満充填で最高出力9kW、供給電力量235kWhを供給できます。これは、避難所での使用電力量を1日あたり約50kWhにした場合の、約4. 5日分に相当する消費電力です。
停電時の携帯電話充電やバルーンライト、電気ポットや扇風機など家電製品への給電に役立ちます。緊急時には国や自治体の要請に従い、被災地の給電支援も行えるとして、防災機能としての期待も高まっています。
(参考:https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/21862392.html
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/015/554/2.pdf)
<ユニバーサルデザインを採用>
FCバスではユニバーサルデザインを採用している点も、特徴のひとつです。
ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、国籍や障がいの有無に問わず、誰もが公平に利用しやすいデザインを指します。
FCバスは車椅子やベビーカーの快適性を高め、車内中央の左側一列のみ座席にし、右側は格納できる横向きシート採用で、車椅子2台を固定できる装置が付いています。また、手すりや停車ボタンも使いやすい位置に設置されているのもポイントです。
さらに、車内外に8個の高精細カメラを配置し、運転席のモニターで画像が確認できる仕組みになっています。視覚支援カメラの搭載で、安全性の向上につながっています。

脱炭素化を実現するFCバスの現状
FCバスは2017年3月に都内で初めて路線バスとして導入され、東京駅丸の内南口~東京ビッグサイト間の営業運行を開始しました。その後、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて100台の導入を目指し、2023年2月時点では都内を中心に124台の導入を実現しています。
東京オリンピック・パラリンピックでは、主に選手やスタッフの移動手段として活用されました。現在は東京を皮切りに、横浜市・大阪市・神戸市・名古屋市・福島市などに広がり、民間バス事業の間でもFCバスの運行が開始されています。
東京都交通局では、複数のフィナンシャルグループの寄付を受けてFCバスを導入するなど、推進に向けた新たな取り組みも実施されています。
(参考:https://www.decarbonation-tech.com/vehicle_74/
https://www.tokyo-h2-navi.metro.tokyo.lg.jp/tonaisuiso/nenryo-denchi-bus)

FCバスの今後の展望
日本政府は2030年までにFCバスを1,200台導入し、水素ステーションを1,000カ所に増やすという目標を掲げています。しかし、FCバスの車両購入費が約1億円かかることや、水素供給インフラの整備が進んでいないことから、実現への目途が立っていない状況です。
東京都ではFCバスの普及促進事業として、購入費の一部を助成する制度を設け、最大5,000万円の補助を行っています。今後は車両導入価格やランニングコストの低減、水素ステーションの運営費低減などに取り組み、普及促進を図る方針です。

FCバスは脱炭素化社会の実現に貢献!
水素を燃料にして走るFCバスは、CO2を排出量ゼロの環境に優しいバスです。また、走行中の騒音や振動が少なく、乗り心地も快適で誰もが安心して乗車できます。
コスト面での課題と向き合うFCバスは、脱炭素社会に欠かせない乗り物として今後さらなる発展を遂げていくことでしょう。