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脱炭素社会は移動が楽になる?超小型モビリティーの現状と課題
Wednesday, 26 February 2025
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今回は「乗り物の脱炭素への取り組み」をテーマに、超小型モビリティーとは何か、現状や課題、将来の展望を併せて解説します。
脱炭素社会に向けて注目される超小型モビリティーとは?
超小型モビリティーとは、1~2人乗りの小型電動自動車です。日本の道路運送車両法では「第一種原動機付自動車」と「軽自動車」として分類されていますが、実際は原付バイクよりも大きく、軽自動車よりもコンパクトです。電気で動くため環境性に優れており、CO2を排出しません。
また、小回りがきくので地域の移動や短距離走行などに適しており、駐車スペースをとらないのが良い点です。一方で高速道路は走行できず、航続距離も短いというデメリットがあります。
超小型モビリティーは「徒歩で行くには遠いスーパーへの買い物」「自宅から駅まで」など、日常の生活圏内で活用するのに適した乗り物です。
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超小型モビリティーの導入が求められる背景
超小型モビリティーの導入が求められる背景には、日本で排出されている二酸化炭素(CO2)
のうち、約20%が運輸部門からで、そのうち86%が自動車による排出という状況があります。86%のうち、自家用車によるCO排出量は47.5%です。
このような状況から、日本政府は2030年度に温室効果ガスの排出量を2013年比の26%削減を目標に掲げています。
また、従来のガソリン車は窒素酸化物や粒子状物質が排出されるため、大気汚染対策としてもCO2や大気汚染物質を出さないゼロエミッションの超小型モビリティーの導入が重要視されています。
さらに、国土交通省が実施する「道路交通センサス」の調査データによると、1回の走行距離が10㎞以下の利用が約7割、乗車人数は2人以下が大半という結果となりました。
加えて高速道路の利用は全体の約5割で、半分の人が高速道路を利用していないことがわかっています。
超小型モビリティーはガソリン車の6分の1のエネルギー消費効率で走行できるほか、地域需要の低下によるガソリンスタンドの減少にも対応した乗り物です。
環境負荷の軽減や自動車利用実態に合う潜在的ニーズが存在する可能性があること、また地域の活性化や高齢化社会への対応策としても、超小型モビリティーの導入が求められています。
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超小型モビリティーの現状
日本では平成22年度から超小型モビリティーの導入促進に向け、取り組みを進めています。ここからは国内の超小型モビリティーの現状を見ていきましょう。
<国土交通省が超小型モビリティーの普及に向けた取り組みを実施>
国土交通省は、平成22〜23年度にかけて全国13地域における超小型モビリティーの実証実験を行いました。どのような場面での利用に適しているのかを調査した結果、日常での身近な移動や都市部・観光地における短距離の移動において活用される傾向が高いことが知見として得られたといいます。
また、超小型モビリティーは自動車より運転しやすいという声が多く、高齢者の外出回数の増加も見られました。
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国土交通省は実証実験で得られた知見を基に、平成24年6月に「超小型モビリティーの導入に向けたガイドライン」を作成し、利活用場面や駐車場などの走行環境、交通のあり方などを示すなどして、普及を図っています。
さらに平成25年には超小型モビリティーの導入促進事業を開始し、地域振興を目的とした導入には費用の一部を補助する支援なども行っています。
(参考:https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000169011.pdf)
<超小型モビリティー認定制度の創設>
さらなる普及促進を目指し、令和2年には超小型モビリティーの車両認定制度を創設しました。一定の大きさや性能、運行地域などの条件を設けることで安全性を確保し、公道での走行をより簡易的に手続きできるようにするものです。
これまでは認定を受けた車両でなければ公道での走行はできなかったのですが、規制が緩和され、60㎞/h以下の車両を証明するマークを表示することで、公道を走行することが可能になっています。
(参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000043.html)
<多岐に渡る活用で全国約6,000台が導入>
普及に向けた取り組みによって、全国で約6,000台の超小型モビリティーが導入されています。導入事例は業務・公務利用、観光利用、日常利用など多岐に渡ります。業務・公務利用では、コンビニや郵便などの配送業務、介護などの訪問業務で活用されている傾向です。
また、観光利用では、自然観光や離島観光での周遊時の利用に活用されています。さらに日常利用では住宅地や駅間など生活の移動手段として、シェアリングでの活用が有用です。
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超小型モビリティーの課題
超小型モビリティーの導入が進む中で、利用目的別の課題も明確になっています。例えば業務・訪問利用での課題は荷物の積載量やセキュリティー問題、エアコンがないため自動車に比べて快適性が劣るといった課題です。
また、観光利用では、窓やドアがないため雨天時の利用率が減少することや、航続距離が短いためバッテリー残量を念頭に置いた運用の工夫などが挙げられます。
さらに日常利用では、自家用車を所有している人が多いため超小型モビリティーの利用に至らない人が多い点や、自然エネルギーを活用した充電設備の普及などが課題となっています。
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超小型モビリティーはさらに利用しやすい乗り物へと発展
政府は引き続き超小型モビリティーの普及促進を図ると共に、安全性の範囲内でより柔軟で使いやすい制度を目指すとしています。
国民の意見を取り入れつつ、認定制度も見直していく予定です。超小型モビリティーは、脱炭素社会に欠かせない乗り物へと進化し続けていくのではないでしょうか。