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気候変動に絡み合う「酸性雨」が降る仕組み|自然や人への影響
Thursday, 08 June 2023
酸性雨とは雨・霧・雪に酸性物質が混ざったものを指し、自然環境や生物、人間、建物などに悪影響を及ぼすとして問題視されているのです。そもそも酸性雨はなぜ発生するのでしょうか。
今回は気候変動のひとつでもある酸性雨が発生する仕組みに加え、自然環境や人への影響を解説します!
気候変動のひとつ「酸性雨」はなぜ発生するの?
まずは酸性雨が発生する仕組みや、普通の雨との違いについて確認していきましょう。
酸性雨が発生する仕組み
自動車の排気ガスや工場からの煙など、石油や石炭を原料とした化石燃料を燃やすと、二酸化炭素と同時に硫黄や窒素などの酸化物が発生します。これらが大気中で硫酸や硝酸といった強い酸に変化し、雨に溶け込んで降ってきたものが酸性雨です。
酸性物質が雨に溶け込む仕組みは2つあります。1つ目は雨を降らす雲ができると同時に酸性物質が雲を構成する核になるケースです。2つ目は雲から雨粒が落ちてくるときに大気中を漂う酸性物質を取り込むケースです。
そのため、後者の仕組みでは降り始めは酸性度が高く、雨が降り続けるとともに酸性度は少しずつ弱まっていく特徴があります。ちなみに、雨だけに限らず強い酸が含まれた雪や霧も酸性雨と呼ばれています。
通常の雨との違い
酸性雨といっても見た目は普通の雨と変わらないため「どうやって酸性雨を見分けるの?」と疑問に思うかもしれません。酸性雨の数値的な定義はないとされていますが、一般的にはpHの数値によって、通常の雨か酸性雨かを見分けています。
・通常の雨…5.6pH
・酸性雨…5.6pH以下
通常の雨も空気中の二酸化炭素が溶け込むため酸性を示しますが、5.6pH以下と特に酸性度の高い状態を、一般的に酸性雨としています。
(参照:酸性雨についてよくある質問)
酸性雨による自然環境や人間への影響
酸性雨は強い酸化物質が含まれる雨で、自然環境や人間にさまざまな影響を及ぼす可能性があるといわれています。
自然環境への影響
酸性雨は河川や、湖、池などの水質を酸性化するため、水中の生物や植物に影響をもたらします。昆虫類や貝類が減少することで、それらをエサとする魚も減少してしまいます。
また、長期に渡って酸性雨が降り続けると、地表の水や土壌の性質を変えてしまう可能性があり、植物が育ちにくくなるのです。そして最終的には、森林全体に大きなダメージを及ぼしてしまうといいます。
人間への影響
酸性雨の原因物質である硫黄や窒素の酸化物は目に入るとしみたり、喉を痛めたりなど健康被害を及ぼす物質といわれています。
1952年にはイギリスのテムズ川流域で「ロンドンスモッグ事件」と呼ばれる事件が発生しました。
当時は主に石炭を燃料としていたため、大量の二酸化硫黄などが大気中に発生し、酸性雨などが原因で呼吸困難や発熱などの健康被害が相次ぎました。その結果、2週間で通常よりも4,000人も多くの人が亡くなったといいます。
その後大気汚染対策が進み、現在ではこのような大きな健康被害は聞かなくなりました。日本でも酸性雨はいまだに発生していますが、改善傾向にあるとされています。
(参照:大気汚染の歴史)
建物への影響
酸性雨はコンクリートをはじめ、大理石や銅などを溶かす性質があるため、建物にも被害を及ぼします。よく見かける雨だれの跡のある銅像などは、酸性雨の影響によるものです。
中国・四川省で世界遺産に登録されている楽山大仏も酸性雨の影響で顔が黒くなってしまうといった現象が起きています。周辺に石炭を使う工場や発電所が多いことが、原因として考えられています。
酸性雨による被害を無くすために個人でできることは?
日本では酸性雨を防ぐための対策として、環境省が「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)」に参加し、酸性雨の状況把握や解明に力を入れています。
では、個人的にできる対策には、何があるでしょうか。石油の燃焼によって酸性雨の原因物質が大気中に排出されるため、自動車の使用を抑えることなどが挙げられます。
しかし、私たちが普段使っている電力のほとんどが化石燃料を原料としたエネルギーであり、物を製造する過程や処理する過程でもエネルギーを消費しています。
日常生活の中でエネルギーの消費を抑えることが、酸性雨を防ぐのに最も重要なことといえるでしょう。
電気の無駄遣いに気をつけたり、物を買い過ぎないようにしたり、資源をなるべく長持ちさせる工夫をしたりと、生活の中でできることはたくさんあります。これらは地球温暖化対策になり、気候変動対策にもつながる取り組みです。
酸性雨を防ぎ、気候変動による異常気象を抑えるためにもぜひ、エネルギー消費を減らす生活を心掛けていきましょう!
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