日本で展開されているクライメートテックの現状と課題

日本ではクライメートテックの市場は拡大傾向にあり、中でも再生可能エネルギーの分野や電動モビリティー関連の普及促進、スマートシティを目指したエネルギー効率化などの技術が進展しています。まずは、日本国内におけるクライメートテックの現状を見ていきましょう。

＜太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの普及＞　

日本では太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が拡大しています。特に太陽光発電が盛んで、発電コストは年々低減している傾向です。

その理由には、太陽光を電気に変える機能が向上し、同じ面積でより多くの電力を発電できるようになったことや、生産技術の進歩によって、大量生産が容易になったことなどが挙げられます。

政策として、発電した電力を企業が一定価格で買い取る「固定価格買取制度（FIT）」が導入されたことで、太陽光発電への投資が促進されコスト削減につながっています。

（参考:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/data/kaitori/2018_fit.pdf

荒廃農地や空港など、発電設備の適地を確保）

＜電気自動車（EV）と水素燃料電池車（FCV）の普及促進＞

日本政府は2035年までに新車の販売を100％電動車に切り替えるとして、電気自動車（EV）の普及促進や水素燃料電池車（FCV）の開発や研究を進めています。

日本自動車販売協会連合会のデータによれば、2023年の日本におけるEVの新車販売台数は43,991台で、2024年のEV普及率は新車販売全体の約2%という状況です。EVの販売比率が約18％の中国や、13％の欧州に比べて大幅に遅れをとっています。

加えて、日本は水素と酸素の化学反応によって自らエネルギーを発電する水素燃料電池車（FCV）の普及を目指し、水素ステーションの整備を進めていく方針です。

（参考:https://www.mitsui.com/solution/contents/solutions/battery/42#item1225

https://www.mitsui.com/solution/contents/solutions/battery/55#item7964）

＜エネルギーの効率化に向けたスマートグリッド技術の普及＞　

日本ではエネルギー効率化に向けて、需要と供給の双方から電力量を調整できるスマートグリッド技術の普及に取り組んでいます。

情報通信技術とネットワークを活用して電力の使用状況がリアルタイムで把握できるため、電力の利用が最適化し、再生可能エネルギーの導入促進にもつながります。

また、環境に優しいエネルギーの使用だけでなく交通アクセスの最適化など、人々の暮らしを持続可能で豊かなものにするため、ICT技術などを駆使したスマートシティーを目指し、全国各地でさまざまな実証実験を進行中です。

（参考:http://www.pref.fukushima.jp/chiiki-shin/saiseiene/energy/smartgrid.html

https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/index.html）

日本で展開されているクライメートテックの現状を見てきましたが、課題を抱えているのも事実です。ここからは日本国内におけるクライメートテックの課題と改善策を見ていきましょう。

＜再生可能エネルギー分野が抱える普及拡大の課題＞　

再生可能エネルギー分野が抱える課題のひとつに、日本は国土が狭いことに加え、山林が多く、活用できる平地が限られているという特徴があります。そのため、太陽光発電や風力発電を設置できる土地が不足している状況です。

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また、海に風車を設置する洋上風力発電などは、開発は進んでいるものの、海域に関するルールや漁業関係者などとの利害調整が必要であり、課題となっています。

しかし2019年4月に、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律（再エネ海域利用法）」が制定されたことにより、洋上風力発電の普及促進につながっています。

加えて、再生可能エネルギーの安定供給も課題のひとつです。太陽光発電や風力発電は季節や天候に左右されるため、コントロールが難しいといえます。不安定な発電量に対応するため、状況に応じて火力発電で調整を行い、将来的には蓄電池なども活用していく方針です。

（参考:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/shuryokudengen.html#topic02）

＜EVや電動モビリティー関連の課題＞

日本でEVの普及率が低い理由のひとつが、充電インフラの整備が需要に追い付いていないことです。日本でガソリンスタンドが約3万カ所あるのに対し、EVの急速充電ステーションは8,000基ほどで、決して十分な充電環境とはいえません。

改善策として、政府は2030年までに急速充電設備を約3万カ所設置する目標を掲げ、EVの普及率を高めるべく取り組みを強化しています。

また、EVやFCVは高コスト構造であるため、国民への普及が進みにくいという点も課題です。そこで国は、EVを購入する際の補助金制度として「クリーンエネルギー自動車導入補助金（CEV補助金）」制度をつくり、普及拡大に努めています。

補助額はその年によって変動し、車両によっても変わってきます。2024年ではEVが15～85万円、FCVは上限255万円となっています。

ただし、一定期間内に購入した新車であることや、購入後4年間は保有することなど、条件があるので注意が必要です。

（参考: https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/xev_cev_2024.html)

日本では、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及を進める一方で、土地の問題や充電インフラの整備不足といった課題を抱えているのが現状です。

これらの課題に対処することで、日本はクライメートテックの分野においてさらに成長を加速していけるのではないでしょうか。