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脱炭素化に新たな可能性!ハイパーループの課題や展望を解説
Friday, 07 March 2025

走行中にCO2を排出しないうえ、最小限の空気抵抗で高速移動できることから、脱炭素社会の新たな移動手段として注目されています。
現在、実用化に向け各国で開発が進められていますが、課題も多いです。今回は「乗り物の脱炭素への取り組み」をテーマに、ハイパーループとは何か、メリットや課題、展望を解説します。
ハイパーループとは?
ハイパーループの「真空状態のチューブ内に高速車両を走らせる」という発想は、かねてよりあったといわれています。
2013年にアメリカの実業家「イーロン・マスク」氏が、ロサンゼルスからサンフランシスコ間をハイパーループで結ぶという構想を発表し、世界的に関心が高まりました。
それ以降、世界各国でいくつかの企業や組織がハイパーループに関する研究や開発を進めています。ハイパーループは、磁気浮上技術(リニアモーター)を採用しているため、車両の摩擦がないのが特徴です。

ハイパーループのメリット
ハイパーループは都市の環境問題を解決に導くメリットがあります。ハイパーループの導入によってどのようなメリットが得られるのか、詳しく見ていきましょう。
<化石燃料不使用でCO2を排出しない>
ハイパーループは磁気浮上を利用して電力で駆動し、化石燃料を使用しないため、車両からCO2が排出されません。電磁推進や真空チューブを利用することで摩擦が少なく、低消費電力で走行でき、エネルギー効率が高いのもメリットです。
また、再生可能エネルギーの導入が考えられており、環境に優しい持続可能な交通手段として期待されています。
<リニアモーターカーの2倍以上の速さで移動できる>
ハイパーループは時速1,000km以上の速度で移動が可能とされています。これはリニアモーターカーの2倍を上回る速さです。
実用化できれば、都市間の移動時間を劇的に短縮でき、遠隔地への通勤やビジネスの効率が向上します。また、日帰りできる観光地の増加も予想され、地域経済への影響も考えられるでしょう。
<天候の影響を受けにくい>
ハイパーループは、真空チューブの中を走行するため、天候の影響を受けにくいというメリットがあります。空気抵抗を受けないため、暴風や豪雨で天候が荒れているときでも通常運転で定時制を確保できます。
<交通渋滞や鉄道などの混雑を緩和できる>
ハイパーループの導入によって、交通渋滞の緩和や鉄道などの混雑を緩和できる点もメリットのひとつです。高速移動の選択肢が広がり、高速道路の渋滞や新幹線、航空路線の混雑緩和も見込まれます。
<衝突事故の軽減>
ハイパーループは一方向に走行するため、衝突事故を軽減できます。
また、真空チューブ内で運行するため、異常気象や外部要因による事故も大幅に削減できるのがメリットです。

ハイパーループ技術の開発と試験状況
多くのメリットをもたらすハイパーループの実用化に向けて、多くの国や地域が技術開発を進めています。ここでは特に注目されているハイパーループの開発状況をご紹介します。
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<オランダ>
2024年9月に、オランダの北東部に位置するフェンダムにある「ヨーロッパ・ハイパーループ・センター」で、ハイパーループの車両走行試験に初めて成功しました。
管理センターからの指示で磁気浮上システムを起動し、420mのトンネル内を乗用車ポッドが駆け抜けるというテストです。
今回は時速30kmにとどまったものの、2030年までに時速100kmを達成し、乗客を乗せた実用化を目指しています。
ハイパーループが導入されると、アムステルダムからベルリンまで1時間半、ミラノまで2時間で行けるとして、欧州の旅行革命が起こる可能性も高いと期待されています。
(参考:https://news.yahoo.co.jp/articles/7d068c7b359b765241a371a2c894f49878bac443
https://www.afpbb.com/articles/-/3538049)
<カナダ>
カナダ・トロントのスタートアップ企業は、ジェット機よりも速く、高速列車の3倍にあたる時速1,000kmで走行するハイパーループの電動車両を発表しました。
航空機と列車のハイブリッドともいえる電動車両は、5億5,000万ドル(約750億円)の融資を受けており、カナダ・アルバータ州に位置するカルガリー市とエドモント市を結ぶ予定です。このラインが実現すると、約300km離れた都市をわずか45分で移動できるといわれています。
また、移動時間が短縮されるだけでなく、乗車運賃は航空券よりも約44%安くなり、CO2排出量は636,000トン削減される見込みです。

脱炭素化に有力なハイパーループの課題と展望
ハイパーループの開発が進む一方で、多くの課題を抱えているのも現状です。例えば、実際に運行を開始するには、ハイパーループのインフラをゼロから構築しなければならないため、巨額の建設コストや維持費がかかります。
また、超高速移動であるため、走行中のシステムトラブルや乗客の緊急時に対応する、安全性の技術も確立しなければなりません。こうした課題から、現実的なのは近距離間の運行であると考えられています。
有力視されているのは、都市間の移動や空港までのアクセスです。実用化が叶えば都市間の移動が劇的に短縮され、輸送の面でも物流の革新によるビジネスモデルの創出につながるといった展望が開けるでしょう。

脱炭素化と移動革命を目指すハイパーループの動向に注目!
ハイパーループはCO2排出量を削減するほか、交通渋滞の緩和や衝突事故の軽減など、多くのメリットをもたらします。複数の懸念点がありますが、プロジェクトは進展中です。
今後のハイパーループの動向に注目していきましょう。