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ESG投資で未来の食と水を守る:サステナブル農業・水資源管理の最新事例
Tuesday, 03 June 2025

今回は、サステナブル農業や水資源管理に焦点を当て、ESGファンドによる具体的な投資事例を解説します。
サステナブル農業とは?ESG投資の新たな注目分野
サステナブル農業は、国連が掲げた持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも寄与するとして、ESG投資の新たな投資分野として注目されています。
まずはサステナブル農業の定義と重要性、ESG投資との関連性を確認していきましょう。
<サステナブル農業の定義と重要性>
サステナブル農業とは、環境への配慮、社会的責任、経済の持続可能性を兼ね備えた農業の形態のことです。具体的には以下の要素が含まれています。
・環境への配慮…土壌の健康を維持し、水資源を効率的に利用して農薬や化学肥料の使用を最小限に抑えることで、生態系への影響を軽減します。
・社会的責任…農業従事者の労働条件の改善や地域社会への貢献を通じて、社会的な公平性を確保します。
・経済の持続可能性… 長期的な視点で収益性を確保し、農業経営の安定性を図ります。
(参考:https://asuene.com/media/1388/)
<ESG投資との関連性>
サステナブル農業はESG投資の、E(環境)、S(社会)の要素に深く関わっています。環境面では、持続可能な農業手法が自然資源の保全や気候変動への対応に貢献します。社会面で挙げられるのは、地域社会の発展や雇用創出、労働環境の改善などです。
そのため、ESG投資家はサステナブル農業に取り組む企業やプロジェクトを評価し、投資対象とする傾向があります。
日本では、農林水産省が食品企業に対してESGへの取り組みを推進しており、サステナブル経営に関するガイダンスを提供しています。
また、農林中央金庫は農林水産業の持続可能な発展を支えるため、サステナブル・ファイナンスを通じた支援を推進中です。
(参考:https://www.maff.go.jp/j/keiei/kinyu/esg_finance.html
https://www.nochubank.or.jp/sustainability/management/finance/)

水資源管理の重要性とESG投資の役割
世界各地で水資源に関する課題が深刻化しています。ESG投資は水資源の持続可能な管理を支援し、社会全体の水問題解決に貢献しています。
ここでは、水資源管理の重要性とESG投資の役割を見ていきましょう。
あわせて読みたい: 食品におけるサステナビリティ|食の問題と私たちができること
<水資源の現状と課題>
水資源の問題が深刻化する要因のひとつに、気候変動による影響が挙げられます。地球温暖化に伴い、降水パターンの変化や極端な気象現象が増加しています。これにより、干ばつや洪水が頻発し、水の供給が不安定になっているのです。
また、世界の人口増加や都市化の進展により、水の需要が急増しています。これに対してインドや中東・北アフリカ地域などの途上国では、水資源の供給が追いつかず、水不足が深刻化しています。
加えて工業活動や農業による排水、生活排水などが河川や地下水を汚染し、安全な飲料水の確保が困難であることも課題のひとつです。
(参考:https://www.kankyodainari.com/articles/environment-issues-water-shortage
<ESG投資が果たす役割>
ESG投資は、環境、社会、ガバナンスの要素を考慮した投資手法であり、水資源管理においても重要な役割を果たしています。具体的には以下のような取り組みが行われています。
【水関連ビジネスへの投資】
水の供給や浄化、再利用技術を提供する企業への投資を通じて、水資源の持続可能な利用を促進しています。
【水資源債券の発行】
水資源機構などが発行する水資源債券は、ESG投資家にとって魅力的な投資対象となっており、水インフラの整備や水質改善プロジェクトの資金調達に活用されています。
【企業の水リスク評価と対策】
企業は水リスク評価ツールを活用して、自社の水使用状況やリスクを把握し、水資源の効率的な利用や保全策を講じています。
(参考:https://www.rbcbluebay.jp/globalassets/japan/2108__jp2.pdf)

ESGファンドによるサステナブル農業・水資源管理への投資事例
ここからは、国内外におけるESGファンドによるサステナブル農業や水資源管理への投資事例を見ていきましょう。
<日本国内の投資事例>
新潟県の証券会社が提供するESGファンドでは、信託報酬の一部を新潟県内の農業関連施設へ寄付することで、地域農業の持続可能性を支援しています。投資家の資産運用と、地域経済の活性化、環境保全の両立を目指すことを目的としたESG投資です。
2016年から2024年にかけて総額10,768万円の寄付が行われ、県内の農業体験施設の整備や農業教育の充実に活用され、地域の農業振興と環境保全に貢献しました。
<海外の投資事例>
ロンドンに本拠地を置く、世界的な資産運用会社が運営するESGファンドは、世界中の食料と水のサステナビリティーに関連する企業への投資を行っています。
食料と水のシステムは資源高率の高い持続可能なものにしなければならないとし、投資を通じてサステナブル農業や水資源管理に貢献しています。
また、リトアニアを拠点とし、農業分野に特化した投資プラットホームを運営する気候テクノロジー企業があります。
ノー・ティル農法、混作、カバークロップの導入など、再生型農業を実践する中小規模の農家に対して、グリーンローンを提供中です。
ノー・ティル農法は不耕起栽培とも呼ばれ、田畑を耕さずに作物を栽培することで耕起に使われる機械の燃料消費削減や、土壌生物の多様性維持などのメリットがあります。
加えてカバークロップの導入とは、主作物の収穫後や耕作しない時期に土壌保護や土壌改良を目的に栽培される作物のことです。
グリーンローンの提供により農家は土壌の健康を改善し、炭素クレジットを生成することで収益を得ることができます。
2024年までにヨーロッパ全体で4,000以上の農家に資金を提供し、持続可能な農業の普及を支援しています。

ESG投資で持続可能な農業と未来の水資源を守る
ESG投資は、持続可能な農業と水資源の保全を通じて、地球環境と未来の生活基盤を支える重要な手段です。
再生型農業や効率的な水管理への投資は、気候変動への適応力を高め、食料と水の安全保障を強化します。
これらは、環境保全と経済的リターンの両立が可能となり、持続可能な社会の実現に貢献する取り組みです。
私たち一人ひとりの選択が未来の地球を形作る力となります。今こそ、持続可能な社会の実現に向けて行動を起こしましょう。