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デンマークにおけるプラントベースフードの推進と成長の可能性
Wednesday, 09 April 2025

環境先進国として知られるデンマークは、食品業界においてもサステナビリティーを重視し、政府・企業・消費者が一体となって植物由来食品の開発と普及を推進しています。
今回は、デンマークのプラントベースフード推進に向けた政府、教育機関、企業の取り組みや、成長の可能性を解説します。
デンマーク政府はプラントベースフード推進に向けた国家行動計画を策定
デンマーク政府は2023年10月に、プラントベースフードに関して世界初の国家行動計画を発表しました。国民の食生活を植物由来のプラントベースに移行することで、環境負荷を減らすだけでなく、経済効果も期待できるとしています。
当時デンマークの食料農業水産大臣を努めていたヤコブ・イェンセン氏は、「プラントベースの食品は未来だ。農業分野における環境負荷を削減するには、プラントベース食品をもっと食べなければならない」と述べました。
プラントベースフード推進に向けた国家行動計画では、主に以下の3つの目標を掲げています。
1.プラントベースフード(植物由来食品)の需要を増やす
2.プラントベースフード(植物由来食品)の供給を増やす
3.農家やシェフ、科学者や食品社会学者、栄養学の専門家にわたるまでさまざまな関係者が協力し合える体制を改善する
植物由来のプラントベース食品には、野菜から果物、豆類、藻類、菌類、酵母まですべてが含まれます。
プラントベース食品の需要を増やす取り組みでは、公共または民間のレストラン、食堂、食品サービスでのプラントベース食品の消費、デンマーク国民による個人消費や、海外輸出市場での消費増加に重きを置き、研究開発が重要な役割を果たすとしています。

デンマークのプラントベースフード推進に向けた具体的な取り組み
国家行動計画のプラントベースフードの需要と供給を増やし、国民の食生活をプラントベースにシフトするために、政府、教育機関、企業が一体となって取り組みを実施しています。具体的にどんな取り組みを行っているのか見ていきましょう。
あわせて読みたい: デンマークによるSDGsの取り組み|持続可能な成長に向けた具体策
<需給拡大に向けたバリューチェーンの強化>
植物由来のプラントベース食品の需給を増やすには、農場から食卓までのバリューチェーン全体の強化が必要であると考えられています。
行動計画では、「土地活用の戦略」から「生産・製造」「マーケティング販売」「輸出」「調査・イノベーション・開発」の5つの段階での施策が示されています。
例えばマーケティング販売では、すべての人に健康でおいしいプラントベース食品を提供するという方針を軸に、調理に従事する人に対する教育の重要性や、国民の食生活指針の一層の普及などについて触れられている点もポイントです。
政府は、2023年から2030年までの間に6億7,500万クローネ(約160億円)のプラントベースフード給付金を予算化しています。
また、2023年11月には植物性たんぱく質の開発やシェフの育成、情報発信など36のプロジェクトに対して総額5,820万クローネの資金援助が行われました。
(参考:https://newsphere.jp/politics/20240705-1/)
<ホスピタリティー・カレッジでプラントベース料理専門プログラムを導入>
国家行動計画を受け、シェフの育成に力を注ぐために資金援助を活用し、デンマークのホスピタリティー・カレッジでプラントベース料理専門プログラムを導入しました。
初年度には26名の生徒が在籍したとされています。フードサービスの提供を行う企業もこの取り組みを支持しており、プラントベース料理はブームであり、専門家の需要は膨大だと言及しています。
(参考: https://www.drivingeco.com/ja/mas-alla-carne-ambicioso-plan-dinamarca-impulsar-alimentacion-vegetal/)
<スタートアップがプラントベースフードの開発を実施>
デンマークでは、プラントベースの代替肉や代替乳製品などを開発するスタートアップが誕生しています。
エンドウマメのたんぱく質を主原料としたプラントベースミートやプラントベースチキン、精密発酵技術を用いてエンドウマメとソラマメから作り出すプラントベースチーズや、ココナッツを使用したプラントベースバターなど、さまざまな製品が開発されています。
政府はプラントベース製品を展開する事業者に資金援助を行い、海外進出を後押ししています。

プラントベースフード推進による経済効果
デンマーク政府は、国民の食生活がプラントベースに移行することで、大きな経済効果も期待できると考えています。
デンマークの農業・食品システムのグリーン転換を加速し、持続可能な食料供給システムの構築を目指す、パートナーシップのAgriFoodTureは、デンマークが世界のプラントベースフード市場で3%のシェアを獲得することで、最大27,000人の雇用を創出し、135億クローネ(約3,160億円)の経済効果をもたらす試算しているのです。
また、コペンハーゲン大学の調査によれば、デンマークの国民が気候変動対策の指針に沿った食生活を送ることで、年間1,000人の死亡者を減らし、国の温室効果ガス排出量を31~45%削減し、医療費120億クローネ(約400億円)を抑えられるとしています。
(参考: https://denmarkfood.jp/cms/wp-content/uploads/Food-Nation_WP_Climate_japanese_enkeltsider.pdf

デンマークは家畜に炭素税を導入し、プラントベースフードへの移行を後押し
デンマークでは環境負荷の軽減や経済成長を目的に、政府が世界初の国家行動計画を策定し、プラントベースフードへの移行を推進しています。
プラントベースフードの需給を増やすためにバリューチェーンの強化を目指し、資金援助にも積極的です。
一方でデンマークは世界的に有名な豚肉生産国でもあるため、国民の食生活を変えるのは容易ではないといわれています。
しかし、2030年には世界で初めて家畜に炭素税を導入する予定があり、プラントベース食へのシフトへ向けて新たな取り組みも促進中です。環境先進国であるデンマークの動向に、今後も注目していきましょう。
