SDGsと世界観光倫理憲章:観光業における労働者の権利を守る取り組み
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SDGsと世界観光倫理憲章:観光業における労働者の権利を守る取り組み

Tuesday, 29 April 2025

観光業は、世界中の経済と文化をつなぐ重要な産業です。しかし、観光業の急成長の裏には、労働者の権利が十分に守られていないという課題も存在します。

この解決策として注目されている取り組みが、SDGs(持続可能な開発目標)と世界観光倫理憲章です。特にSDGs目標8「働きがいも経済成長も」は、観光業における公正な労働環境の確保を強く訴えています。

今回は、SDGsと世界観光倫理憲章が観光業における労働者の権利保護にどのように貢献しているかを探り、その取り組み状況と課題について解説します。

SDGsにおける労働者の権利保障の意義 

SDGsは地球が抱えるさまざまな問題を解決し、持続可能な社会を目指すための世界共通の目標です。観光業は世界中で多くの雇用を生み出している一方で、労働条件の悪化や権利侵害などの問題も生じています。

 

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」はこの問題に正面から取り組むことを求めています。例えば、持続可能な経済成長の促進です。観光業においても経済を成長させつつ、その成長がすべての人に利益をもたらす形であることが重要とされています。

 

そのため、観光業に関わる人々が安定した収入を得られる仕事を提供することが不可欠です。また、安全で健康的な労働環境であること、適正な賃金で働きがいがあり、差別や搾取のない職場である点が求められています。

 

観光業において公正な労働環境を提供することで、労働者の満足度の向上やサービスの質の向上、持続可能な観光業の実現につながります。

 

さらに観光業だけでなく、安定した雇用によって貧困の削減や不平等・差別の改善など社会全体にもメリットをもたらすのです。

 

(参考:https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/8-economic_growth/)

世界観光倫理憲章が示すガイドラインと取り組み

国連世界観光機関(UNWTO)は、持続可能な観光の実現を目指すためのガイドラインとして「世界観光倫理憲章」を採択しました。

 

全10条で構成される憲章の中でも特に第9条では、労働者や事業者の権利に関する保護が強調されています。以下は主な事項です。

 

・適正な賃金の支払い…労働者が生活できるだけの報酬を確保すること。

 

・安全で健康的な職場環境…職場での事故や病気を防ぐための対策を実施すること。

 

・社会的保護の提供…雇用保険や医療保険など、労働者を保護する制度を確立すること。

 

・差別の禁止…性別、年齢、人種、宗教などに関する不当な差別をしないこと。

 

・労働者の権利意識の向上…従業員が自身の権利を理解し、守れるように教育を提供する。

 

(参考:https://unwto-ap.org/wp-content/uploads/2020/01/GCET.pdf)

観光業における労働者の権利を守る取り組み事例 

いくつかの観光企業や政府機関では、SDGsや世界観光倫理憲章のガイドラインに基づき、労働者の権利を守る取り組みを実践しています。ここでは一部の事例を見ていきましょう。

 

あわせて読みたい: SDGsにおける倫理的取り組み「世界観光倫理憲章」とは?

 

<エコツーリズムの推進>

エコツーリズムとは、環境や社会に配慮した観光スタイルのことです。一部のツアー会社では、地元住民の雇用を優先し、フェアトレードの原則に基づいたサービスを提供しています。例えば、ツアー会社が地元のガイドを雇用し、適正な報酬を支払う仕組みを導入するなどの事例があります。

 

(参考:https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/feature1/20240403.html)

 

<ホテル業界での労働条件改善プログラム>  

低賃金や長時間労働などが問題で、ホテル業界では人手不足が深刻化しています。この問題の解決策として、低賃金で働く従業員の待遇改善や、労働時間の適正管理など、労働条件の改善プログラムなどが多数のホテルで実施されています。

 

また、観光庁では観光産業における人材不足対策事業として、業務効率化に向けた設備やサービスの導入などホテル労働者の負担を減らす取り組みも推進中です。

 

(参考: https://kanko-jinzai.go.jp/)

 

<持続可能な観光の国際認証制度の導入> 

持続可能な観光において、労働者の権利保護を含む、国際的な認証制度の導入が進んでいます。

 

この認証制度は観光業界における倫理的かつ持続可能な運営を促進することに加え、旅行者が倫理的に運営するホテルやサービスを選択する指標としても貢献しているのです。

 

例えば、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会が定めた基準に基づいて観光の取り組みを評価するGSTC認証」は、環境や文化遺産の保護、地域社会への貢献や労働者の権利保護が含まれています。

 

具体的には、衛生管理や安全、環境、労働などに関するすべての適用可能な国際法、国内法、および地域の条例を順守することが求められています。

 

(参考:https://www.gstcouncil.org/about/?lang=ja)

 

<旅行者向けに倫理的に運営されているホテルを紹介するサービス>

旅行者が倫理的に運営されている宿泊施設を選択できるよう、持続可能な観光に関する情報を提供するプラットフォームやサービスが増えています。

 

これらのサービスは、労働者の権利保障や環境への配慮など、持続可能な運営を行っているホテルや旅館を紹介し、旅行者がより倫理的な選択を行えるよう支援しています。

 

(参考:https://murabito.nipponia.or.jp/areas/)

労働者の権利保障が観光業の発展に与えるポジティブな影響 

労働者の権利を守ることは、単に人道的な取り組みとして重要であるだけでなく、観光業全体の発展を促進する要因でもあります。

 

例えば、接客やサービスの品質向上です。労働者が公正な待遇を受けることで、仕事に対するモチベーションが向上し、サービスの質向上にもつながります。

 

また、労働者を大切にする企業や地域は「倫理的な観光地」として評価され、観光客からの信頼を得やすいでしょう。さらに、観光業の利益が労働者に還元されることで、地域全体の経済発展の促進が期待できます。

観光業の未来と持続可能な発展のために 

労働者の権利を守ることは、観光業の持続可能な発展に直結する重要な要素であり、SDGs目標8と、世界観光倫理憲章の指針に基づいた取り組みが必要不可欠になります。

 

今後は企業だけでなく、旅行者自身も倫理的な選択を意識することが求められるでしょう。観光地や宿泊施設を選ぶ際には、倫理的観点を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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