SDGsと世界観光倫理憲章を生かした文化遺産保護の取り組み
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SDGsと世界観光倫理憲章を生かした文化遺産保護の取り組み

Monday, 28 April 2025

昨今、世界各地で文化遺産を観光資源として活用する動きが活発化しています。しかし、観光客の急増による環境負荷や地域社会への影響が問題視されるケースも少なくありません。

そこで注目されているのが、持続可能な観光を目指し策定された「世界観光倫理憲章」を指針とする取り組みです。SDGs目標11の中でも、文化遺産の保護は重要なテーマとされています。

今回は、SDGsと世界観光倫理憲章を生かした文化遺産保護の方向性と取り組み事例を解説します。

SDGsと世界観光倫理憲章が示す文化遺産保護の方向性

国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)と、世界観光倫理憲章が示す文化遺産保護の方向性には共通点があります。

 

それは「観光で文化遺産を守りながら、地域社会とも上手く共存していく」という考え方です。両者が示す文化遺産保護の方向性について、詳しく見ていきましょう。

 

<SDGsの目標11(持続可能な都市とコミュニティ)と文化遺産保護>

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」では、持続可能な都市とコミュニティーの実現が目的であり、「世界の文化遺産や自然遺産を守りながら都市を発展させる」という点が含まれています。

 

つまり、観光による収益を生かしながらも、歴史的な建物や伝統文化を壊さずに残していくことが大切です。

 

例えば、世界の人気観光都市ランキングで1位を獲得したこともある京都の街並みは、景観規制を設けて高層ビルの建設を制限しています。

 

(参考:https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/11-cities/

https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000281/281294/guideline_takasa.pdf)

 

<世界観光倫理憲章が提唱する観光の倫理的ガイドライン> 

国連世界観光機関(UNWTO)が策定した世界観光倫理憲章では、観光が環境や文化遺産、社会に及ぼす悪影響を最小限に抑えつつ、観光を最大限に発展させることを目的とし、観光の倫理的ガイドラインを提唱しています。この憲章では、観光が自然や文化遺産を壊さないようにするためのルールが示されています。

 

例えば、観光客は現地の文化やルールを尊重するべきとして、寺院や神社での騒がしい行動やふさわしくない服装などは避けるべき行為です。

 

また文化遺産に落書きをしたり、故意に破壊するなど価値を損なうような行為は、各国の法律に従い罰則が課されるべきと示しています。

 

(参考:https://unwto-ap.org/wp-content/uploads/2020/01/GCET.pdf)

 

<観光産業と地域社会の共存>

観光地が発展するには、地域の人々と観光産業が協力し合うことが重要です。文化遺産が守られ、観光で経済が活性化する一方で、地域住民が生活しにくくなっては本末転倒といえます。

 

そのためには、観光客の数を適切に管理したり、地域住民の生活を守るための規制を設けたりする必要があります。

 

また、地元の職人と協力して伝統文化を生かしたワークショップを開催するなど、観光を通じて地域社会が豊かになる仕組みの構築が重要です。

 

あわせて読みたい: デンマークによるSDGsの取り組み|持続可能な成長に向けた具体策

世界各地の文化遺産保護の取り組み事例  

環境・経済・地域社会の3つのバランスが取れた持続可能な観光を目指すため、世界各地では文化遺産保護に関するさまざまな取り組みが行われています。ここでは具体的な取り組み事例を見ていきましょう。

 

<日本の文化遺産保護と観光のバランス> 

京都は歴史的な寺社や伝統的な街並みが多く残る都市であり、観光客が集中することで地域社会への影響が懸念されています。これに対し、京都市は観光客と住民の共存を図るため、「観光振興計画」を策定し、観光客のマナー向上や地域資源の保護に努めています。

 

また、岐阜県の白川郷と富山県の五箇山は、伝統的な合掌造りの家屋が集まる集落として知られており、1995年に世界遺産に登録されました。これらの地域では、観光客の増加により交通渋滞やごみ公害、住民のプライバシー侵害などが発生しています。

 

問題を解決するため、観光客の受け入れ体制の整備や環境保全対策が進められています。

 

(参考:https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000283682.html

https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/7406.pdf

https://www.info-toyama.com/stories/gokayama)

 

<ヨーロッパでの持続可能な観光の実践> 

イタリアのベネチアやスペインのバルセロナなど、ヨーロッパの主要観光地では、観光客の過剰な集中(オーバーツーリズム)により、環境破壊や住民の生活への影響が問題となっています。これらの都市では、観光客数の制限や観光税の導入、観光客向けの教育キャンペーンなどを実施し、多角的な対策を講じています。

 

例えばベネチアでは、2024年4月より、日帰り旅行客に対して5ユーロの入域料を徴収する制度を試験的に導入しました。

 

しかし、観光客は期待通りに減少しなかったため、2025年は対象日数を29日から54日に拡大し、予約が直前の場合は入域料を10ユーロに引き上げることを検討しています。

 

(参考:https://jp.reuters.com/world/europe/M7SL3CI4Z5OYNJIMJVNSDFT4LY-2024-04-25/

https://www.tcvb.or.jp/jp/project/0b462134115beeff30aa7346bcc1a9ee.pdf)

 

<途上国における文化遺産保護と地域活性化>

文化遺産に指定される場所や建築物を保持する途上国では、遺産保護と並行して観光産業を生かした地域活性化が進められています。

 

例えばベトナムのドンラム村は、2005年に「国の文化遺産村」に認定されました。日本の国際協力機構(JICA)などが協力し、伝統的な家屋の修復や景観の維持活動を支援しています。

 

また、遺産の価値を住民に理解してもらうために、政府や専門家によるワークショップや教育プログラムなども実施中です。

 

さらに、観光産業を生かした地域振興として、伝統的な暮らしの体験や食品の販売など環境や文化を大事にしたエコツーリズムを推進しています。

 

(参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jafit/20/0/20_KJ00008725754/_pdf/-char/ja

https://www.jica.go.jp/volunteer/outline/story/18/index.html)

文化遺産を守りながら地域社会と共存し、地域活性を目指す取り組みが大切 

SDGsと世界観光倫理憲章会が示す文化遺産保護の方向性は、文化遺産を守りながら地域社会と共存し、観光で地域を活性化させていくという考え方です。

 

文化遺産の保護と観光のバランスを取るためには、地域の特性や課題に応じた多様なアプローチが必要になります。

 

持続可能な観光を実現するためには、行政、地域住民、観光業者、観光客の協力と意識向上が不可欠といえるでしょう。

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