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ロサンゼルスにおけるUrban Farming|背景や事例を解説
Friday, 08 November 2024
ここに住む人々の「文化を変えたい」という強い思いや、経済不安、環境意識の高まりなどから、空いたスペースを畑に変えるUrban Farmingが活発化しているのです。
今回はロサンゼルスでUrban Farmingが始まった背景や成功事例を解説します!
ロサンゼルスでUrban Farmingが始まった背景
ロサンゼルスでUrban Farmingが始まった背景には、食の砂漠化の問題に加え、都市化の促進や食料価格の高騰、環境意識の高まりなどさまざまな要因が挙げられます。
まずはロサンゼルスでUrban Farmingが始まった背景を見ていきましょう。
<食の砂漠化の問題>
ロサンゼルスには食の砂漠化と呼ばれる地域が存在します。食の砂漠化とは、住民が新鮮で健康的な食品にアクセスしづらい地域のことです。アメリカの農務省によると、食の砂漠化は都市の低所得地域で進んでいると報告されています。
このような地域では、新鮮な野菜や果物、全粒穀物などの健康的な食材が並ぶスーパーや食料品店が少ないという特徴があります。代わりに加工食品や高カロリー食品ばかり並ぶファーストフードやコンビニが多く、これらの食品を購入せざるを得ない状況です。
また、低所得で自家用車がないことや、公共交通機関が十分でないことも健康的な食にアクセスできない要因のひとつです。
食の砂漠化が進む地域では、栄養不足や食習慣の悪化が問題となっています。こうした問題の解決策としてUrban Farmingの取り組みが始まったのです。
(参考:https://www.elle.com/jp/gourmet/g27525078/fooddeserts-19-0602/?slide=3
https://eatlocalkobe.org/urbanfarming-ronfinley/)
<経済不安や食料安全保障の強化>
ロサンゼルスは都市化が進んだことで農地が減少し、食料供給の多くを外部からの輸入に頼っています。しかし、食料の高騰による経済的な不安や、気候変動による農業生産の不安定さが増しているのが現状です。
こうした背景から、都市内での食料安全保障の強化が求められ、食料自給率の向上が必要とされています。Urban Farmingは地元での食料生産を促し、供給チェーンのリスクを減らす役割があるとして取り組まれるようになりました。
(参考:hhttps://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000022442.pdf)
<環境意識の高まり>
ロサンゼルスは大気汚染や水不足など、多くの環境問題に直面しています。これに対して市民の間で環境保護への意識が高まり、持続可能な都市づくりを求める動きが広がりました。
Urban Farmingは都市部に緑地を増やし、二酸化炭素(CO2)の吸収やヒートアイランド現象を緩和するとして注目されるようになったのです。
また、地元で食料を生産し消費することで輸送に伴う温室効果ガスの排出を減らし、生物多様性の保護にも貢献するとして、Urban Farmingの必要性は高まっています。
(参考:https://clair.or.jp/j/forum/docs/01_LosAngeles_globalwarming.pdf)
<課題だったコミュニティーの再生や社会運動>
ロサンゼルスの低所得地域では犯罪率が高く、コミュニティーの再生が課題でした。地域住民が協力し合い、空いた土地を利用してコミュニティー農園を作るUrban Farmingは、犯罪率の低下や地域コミュニティーの結束を強める手段となっています。
また、1980年〜1990年代にかけてロサンゼルスで活発化した社会運動も、Urban Farmingの普及を後押しするきっかけとなりました。
(参考:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/122500654/
https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/DBb1140202.pdf)
<政策の導入やサポート>
2013年にカリフォルニア州が「Urban Agriculture Incentive Zones(UAIZ)」法を成立させました。UAIZは「都市農業奨励地域」を意味し、都市近郊での農業と健康的な生活を推進するために固定資産税の優遇措置をするという制度です。
政策支援により、都市内の未利用地を農業に活用するためのインセンティブが与えられたことで、ロサンゼルスにおけるUrban Farmingの普及が促進しました。
ロサンゼルスにおけるUrban Farmingの成功事例
ロサンゼルスにおけるUrban Farmingにはいくつかの成功事例があり、それぞれが環境や経済、地域社会に貢献しています。ここでは2つの成功事例を見ていきましょう。
<家族経営の小規模な農園で高い収量を実現するUrban Farming>
ロサンゼルス郡のパサデナという地域には、家族経営の小規模農園で高い収量を実現するUrban Farmingの事例があります。1980年に設立された農場は、約400㎡でありながら年間約3,175kgの農産物を生産し、持続可能な都市農業の先駆者として注目されています。
また、地元のレストランや市民に直接販売するなどして経済的な成功を収めている点もポイントです。
さらに、ワークショップや教育プログラムなども実践し、コミュニティーを育む取り組みも行なっています。
(参考:https://www-urbanhomestead-org.translate.goog/?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc)
<ホームレスの支援につながるUrban Farming>
ロサンゼルスには、ホームレス支援施設に隣接する農園があります。約0.6ヘクタールの農園では、野菜や果物を栽培し、ホームレス支援施設の食事に提供している点が特徴です。これにより、施設の人々は栄養価の高い食事をとることができます。
また、ホームレスの人々に農業の技術を伝え、自己肯定感を高める支援も行っています。
ロサンゼルスのUrban Farmingは食の砂漠化問題に貢献!
ロサンゼルスにおけるUrban Farmingは、食の砂漠化など深刻化する問題に貢献しています。Urban Farmingが広がった理由は政策支援の力も大きいといえます。
食料安全保障や地域コミュニティーを強化するUrban Farmingは、今後も重要性を増していくことでしょう。
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