培養肉はどうなる?日本の研究状況と実用化に向けた世界の動き

培養肉は畜産業がもたらす環境負荷を大きく軽減できるとして、オランダをはじめアメリカや日本でも研究が進められています。また、日本ではまだ販売されていませんが、シンガポールではすでに培養肉の販売が開始されました。

そこで今回は、日本における培養肉の研究状況と培養肉の実用化に向けた世界の動きを解説します!

目次

日本における培養肉の研究状況

培養肉とは、牛や豚、鶏などの畜産動物から細胞を培養して人工的に作られた肉のことです。再生医療の技術を用いて動物の幹細胞を採取し、体外で培養していきます。

幹細胞は筋細胞と脂肪細胞の2種類あり、これまでは筋細胞のみを採取して細胞を増やし、まとまった筋繊維に後から脂肪を注入して肉らしくするという方法でした。

日本では、2019年3月に東京大学の研究チームが、世界初のサイコロステーキ状の培養肉を作ることに成功しています。

その後、2021年10月に順天堂大学の研究グループが、牛の骨格筋から採取した特定の細胞を培養し、筋肉と脂肪成分の両方を一度に作り出し、培養肉のかたまりにすることに成功したと報告しました。

これによって、従来の赤身肉のような培養肉から、筋肉と脂肪のバランスのとれた培養肉ができるようになると期待されています。この技術で3週間培養すると、1つの細胞から70兆個以上の細胞を生み出せるとしています。

また、2022年3月には東京大学と食品メーカーの研究グループが、これまで使用していた食用でない研究用素材を独自開発した食べられる素材に変更し、日本初の「食べられる培養肉」を作ることに成功しています。

しかし、材料費の高さや生産体制などの課題をクリアしていく必要があり、まだ実用化には至っていないのが現状です。

(参照: https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/sciencewindow/20191024_w01/
https://www.asahi.com/articles/ASPBD4G93PB7ULBJ01R.html
https://www.i.u-tokyo.ac.jp/news/files/IST_pressrelease_20220331_takeuchi.pdf)

培養肉の実用化に向けた世界の動き

日本における培養肉の研究状況をお伝えしましたが、世界では培養肉の実用化に向けてどのような動きがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

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<培養肉開発に取り組むベンチャー企業は世界で70社以上>

2022年現在、世界で70社以上のベンチャー企業が培養肉の開発に取り組んでいます。主にオランダ、アメリカ、日本、イギリス、イスラエルなどの企業が参入しています。

また牛、豚、鶏だけでなく、魚や甲殻類、うなぎ、フォアグラなどを培養肉技術で作る研究も行われています。2021年に俳優のレオナルド・ディカプリオ氏が2社のスタートアップ企業に投資し顧問を務めたことで、培養肉の認知度が高まりました。

多くの企業が培養肉の開発に参入し、市場の拡大を見据えた投資が増えたことで、研究開発の低コスト化を実現する道筋が見えてきたといわれています。

(参照: https://news.yahoo.co.jp/articles/756cbeed09c61e3fae1532547390daf6f2013dde)

<シンガポールで世界初の培養鶏肉の販売を承認!デリバリー販売も開始>

シンガポール政府は、2020年世界に先駆けて培養鶏肉の販売を承認しました。米国の培養肉ベンチャー企業が、シンガポール政府から培養鶏肉のナゲット製造・販売の許可を得たのです。現在では一部の屋台やレストランで培養鶏肉のナゲットを使ったメニューが提供されています。

ある高級レストランでは、培養鶏肉ナゲットを使った料理のデリバリー販売を数量限定で実施。ナゲットの乗ったチャーハンが日本円で2000円ほどですが、売り切れることも多いそうです。

シンガポール政府が他国に先駆けて培養肉の受け入れを進めている背景には、積極的にフードテック企業を支援する姿勢があります。面積の小さいシンガポールは食料の90%を輸入に頼っており、コロナ禍でさらに食料調達の危機感が高まったからだと考えられています。自給率を上げるために、培養肉などのフードテックが重視されているのです。

(参照: https://globe.asahi.com/article/14597366)

培養肉が低コストで買える日は近い?今後の動きに注目しよう!

現時点では培養肉の販売許可が出ている国はシンガポールのみです。しかし、培養肉の研究は世界各国で進められており、集まる投資額も増加傾向にあります。

2013年にオランダで世界初の培養肉ハンバーガーが作られた際には、日本円にして約3000万円以上のコストがかかったといわれています。その時代を経てシンガポールで2000円程度の価格で培養鶏肉のメニューが食べられるようになったのは、大きな進歩といえるのではないでしょうか。

培養肉は、環境負荷の軽減や食糧危機問題を救う他、畜産動物の命を守ることにもつながります。研究の進歩によっては、培養肉が私たちの食卓に並ぶ日も近いかもしれません。

培養肉の今後の動きに注目していきましょう!

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