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電子廃棄物からアートを創る!美術家が目指す真のサステナブルとは?
Wednesday, 28 August 2024

今回は「The use of arts to promote sustainability(持続可能性を促進するための芸術の使用)」をテーマに、電子廃棄物からアートを生み出す美術家、長坂 真護さんのサステナブル事業や目標とする真のサステナブルな世界について解説します!
「世界最大の電子機器の墓場」を見て電子廃棄物からアートを創ろうと決意
美術家の長坂真護さんは、もともとアパレル会社を経営していました。しかし一年で倒産し、その後は路上アーティストとして世界中を回り絵を描いていたといいます。
長坂さんが電子廃棄物からアートを創るという発想に至ったのは、ガーナのスラムにある「電子機器の墓場」を知ったことでした。
ガーナのスラム・アグボグブロシー地区は、世界中の国から電子ごみが集まってくる場所で「世界の電子機器の墓場」と呼ばれています。特に先進国からの電子ごみは多く、日本のラベルが貼られているものもあるといいます。
この場所に電子ごみが集まってくる理由は、危険な電子ごみを処理するのに費用が安く、都合が良いからです。
実際、電子ごみからレアメタルなどのわずかな金属を取り出し、日当500円程の収入を得て生活している人が多く存在します。
しかし電子ごみを焼却処分する際に有害物質を含んだ煙が発生し、それを吸い込むことで健康を害する人が後を絶たないのです。20代や30代の若者もがんで亡くなっている事実があります。
長坂さんは2017年6月に現地を訪れ、想像を絶する光景を目の当たりにし、初めて人のために何かをしたいと思ったといいます。
そして、自分に何ができるかを考え、出た答えが「電子廃棄物を素材に作品を創り、得た売上げを現地に還元することでガーナの現状を変えていく」というものでした。
(参照:MAGO CREATION 長坂 真護|「アートでサステイナブルな社会を作る」ガーナに学校や美術館を設立したアーティストの思いとは)
電子廃棄物から創るアートで得た利益をガーナのスラム街へ
長坂さんは電子廃棄物として捨てられていた、リモコンやキーボードなどの金属以外を持ち帰り、絵の材料にして作品を創りました。そして2017年11月に再びガーナのスラムを訪れ、作品の売上げで購入したガスマスク250個を寄贈したのです。
その際、現地の人々に「アートでこのスラム街をより良くする」と誓ったといいます。
電子廃棄物から創るアートを通じたサステナブル事業
長坂さんは電子廃棄物を材料にした1点もののアート作品を次々と生み出し、1点1,500万円で売れる絵もありました。2021年時点での作品の総売上は、8億円を超えたといいます。
長坂さんは、自分の給料は5%しか取らず、残りはガーナのスラムやサステナブル事業に投資していると話しています。
以下は、実際に行われているサステナブル事業です。
スラム街初の学校を設立
2018年にスラム街で初の学校を設立しました。未就学児を対象に、今後50年は無償で通えるとしており、英語・算数・社会・アートを学習できます。
リサイクル工場を設立
電子廃棄物からプラスチックチップを生産できる、リサイクル工場を設置。建材として販売されている「MAGO BLOCK」の原料になります。電子廃棄物の削減と共に、ガーナのスラムから雇用を生み出すことにもつながっています。
アートギャラリーを開設
リサイクル工場の隣にアートギャラリーを開設し、ガーナのスラム出身アーティストの育成やプロデュースを行っているほか、長坂さんが設立した「MAGO GALLERY」や美術館、百貨店などで展示販売を行っています。
農園事業
ガーナのアクラ近郊に農業用地を開墾。スラムから雇用したメンバーがトレーニングを受け、モリンガの苗550本を栽培しています。その他にも、コーヒーの苗500本、プランテーン500本、オリーブの苗10本を育てており、今後はコーヒー豆の育成やモリンガの商品化を予定しています。
EVバイク、キックボードの研究・開発・デザイン
EVバイクやキックボードを研究・開発・デザインし、最先端の技術をスラムに投じる事業も行っています。2023年には、ガーナ人のデザイナーがデザインした新電動キックボードが発売されました。
ビーチクリーン
先進国から過剰に寄付された衣料が、アクラ近郊のビーチに大量に廃棄されています。そのビーチの清掃を行い、衣類廃棄物を土に還すプロジェクトに取り組んでいます。
長坂 真護さんが提唱する「サステナブル・キャピタリズム」とは?
長坂さんは「文化・経済・社会貢献」の3つが持続的に循環する「サステナブル・キャピタリズム(持続可能な資本主義)」を提唱し、活動しています。
電子廃棄物から創られる作品を所有することで、ガーナの経済に貢献し、文化性が高まります。そして、作品を通して世界にメッセージが広がり、スラム街はさらに発展するといった循環です。
「アートを購入した人も、現地の人も地球もみんな喜ぶ」というのが真のサステナブルであると、長坂さんは話しています。
長坂 真護さんが2030年までに目標とする真のサステナブル
長坂さんは2030年までに「世界の電子機器の墓場」と呼ばれるガーナのスラム街を含むガーナ人10,000人の雇用を目標にしています。
また、最終的に廃棄物が無くなり、現地の人に公害ゼロのサステナブルタウンをプレゼントするのが、最後の作品だといいます。
美術家としてアートで世界平和を目指す長坂さんの作品は、オンラインでも見ることができます。長坂さんの活動や作品を通じて、真のサステナブルのためにできることを考えてみてはいかがでしょうか。
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