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エアバッグのアップサイクルとは?取り組みの背景にある問題
Monday, 06 May 2024
その背景には、未使用のまま大量に廃棄されるエアバッグの問題があります。今回はエアバッグのアップサイクルが進む背景にある問題やエアバッグから生まれるアップサイクル製品の一部をご紹介します!
エアバッグのアップサイクルが進む背景にある問題とは?
そもそもエアバッグとは、車が一定の強い衝撃を受けた際に、風船のように膨らんで衝撃を緩和してくれる安全装置です。衝突事故などによる頭部や胸部への衝撃を軽減し、私たちの命を守る役割があります。
エアバッグは運転席や助手席などのフロント部分だけでなく、車のサイド部分や後部座席部分などに搭載されているのが特徴です。
自動車の安全装置として欠かせないエアバッグですが、一定の衝撃がない限り作動することはありません。日本は世界で3番目に多い自動車保有国ですが、7,800万台の自動車のうちエアバッグが作動するのは10%以下といわれています。(※2019年)
また、自動車は廃棄する際にパーツの90%以上がリサイクルされていますが、エアバッグに関しては取り外しや回収に手間がかかることから、ほとんどが再生されずシュレッダーダスト(粉砕屑)として廃棄されてしまっているのです。
不要になり解体される車の台数は、国内で年間約200万台とされていますが、そのうち取り外して回収されているエアバッグは20%程度といわれています。
このように未使用で廃棄されるエアバッグの廃棄問題を解決しようと進められている取り組みが、エアバッグのアップサイクルです。今、さまざまな企業が手を組み、エアバッグの素材を生かしたアップサイクル製品の開発が進んでいます。
エアバッグの素材は高機能!さまざまなアップサイクル製品をチェック
エアバッグには、主にナイロン66という原糸が使われていて、軽量かつ耐熱性や耐久性に優れた特徴があります。強度が高く丈夫なため、バッグ類や衣服としても適しているのです。
最近ではエアバッグの素材の特徴を生かしたさまざまなアイテムがアップサイクル製品として登場しています。ここでは、その一部をご紹介します!
(参照:ナイロン(エアバッグ用途))
トートバッグ
エアバッグの素材を生かした、ワンハンドルのシンプルなアップサイクルトートバッグです。染色はせず白い生地を生かしたまま、プリントをあしらったデザインが特徴。
A4のファイルが入るサイズで、丈夫ながら超軽量のため、ノートパソコンなどの持ち運びも楽々です。
このほかにも、エアバッグ素材の生地と持ち手部分にシートベルトを再利用した薪専用のトートバッグなどもあり、話題になっています。
サコッシュ
もともと折りたたまれているエアバッグを利用して染色をほどこした、アップサイクルのサコッシュです。エアバッグならではのステッチやシワ、色ムラなどがポイントになり、いい味を出しています。
サコッシュはスマホやカードなど、必要最低限の荷物で買い物に行く時にも便利です。また、紐が取り外しできるので、バックインバッグとしても役立ちます。
バックパック
エアバッグと廃棄されるシートベルトをアップサイクルして作られたバックパックです。エアバッグは洗浄・染色することで、やわらかい質感の生地になり、独特な風合いに仕上がります。
バッグのバックルには、本物のシートベルトのバックルを使用しているのもポイント。自動車の廃棄パーツを上手に再利用し、世界でひとつだけの価値ある一点ものに生まれ変わらせています。耐久性があり、収納力も抜群のバックパックです。
スタイ
エアバッグとして使われるはずだった未使用の生地で作った、スタイ(よだれかけ)です。パステルカラーに染めたかわいらしい色合いと、シンプルなデザインが魅力。撥水性のある生地なので汚れてもシミになりにくく、ガシガシ洗えるのもポイントです。素材が軽いため、赤ちゃんに着用しやすく、持ち運ぶときにかさ張らないのも良いところです。
ジャケット
テスト走行で使ったエアバッグをアップサイクルして作られたジャケットです。エアバッグに使われるナイロン66ならではの耐熱性や耐久性を持ち合わせているため、高機能な服に仕上がっています。見た目に比べて軽く、着やすい点がポイント。エアバッグの識別番号もそのまま残されており、個性的なデザインも魅力です。
(参照:“エアバッグ”を着こなす!?)
命も環境も守る!エアバッグのアップサイクル製品に注目しよう!
自動車の安全装置であるエアバッグは、幸いにも作動することなく廃棄・焼却処分されるケースがほとんどです。しかし、再利用が難しいとされてきたエアバッグのアップサイクルへの取り組みは、少しずつ広がっています。
エアバッグをごみとして捨ててしまうのではなく、新たな価値をつけて製品化する動きは、SDGs12「つくる責任 つかう責任」の達成にも通じます。命を守ったうえで環境も守る、エアバッグのアップサイクル製品に注目していきましょう!
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