都市生活ではストレスの要因となるものが多い環境といえます。主に以下のようなストレス要因が挙げられます。

・高い人口密度による、プライバシーが保持しにくい生活空間
・公共交通機関での通勤・通学ラッシュ
・交通や建設工事、生活音などの騒音
・夜間における、明るい街灯や看板の光などの光害
・早い生活ペースによる時間のプレッシャー
・物価高や家賃高、仕事の不安定さによる経済的プレッシャー
・人間関係の希薄化による孤独感
・人間関係で生じるストレス
・緑地減少や屋外活動の制限による自然との接触欠如や運動不足
・情報過多やデジタルの過剰使用
・急速な変化や自然災害のリスク

都市環境ではこれらの要因が複合的に作用しており、都市住民のストレスを増大させています。

大気汚染された自然の少ない都市環境で、仕事や経済的なプレッシャーを感じながら時間に追われて生活している人は、ストレスを抱えやすいといえるでしょう。

（参照:都市生活とメンタルヘルス)

多くのストレスを抱えやすい都市生活者の、心身の健康に良い効果を与えてくれるといわれているのが、Urban Farmingです。Urban Farming、すなわち農作業によるストレス軽減効果は科学的にも証明されています。

ここでは、Urban Farmingでストレスが軽減するといわれる理由を、科学的根拠に基づいて見ていきましょう。

自然と触れ合うことによるストレスホルモンの減少

Urban Farmingで自然と触れ合うことで、ストレスホルモンのコルチゾールの分泌が減少することが研究で明らかになっています。

収穫作業の前後に唾液成分の測定とアンケートで調査した結果、ストレスホルモンのコルチゾールが減少するだけでなく、幸せホルモンのオキシトシンが増加していることもわかりました。

（参照:体験型農園でストレス軽減　初の科学的実証－全中と順天堂大)

土いじりや植物の世話で幸せホルモンの分泌が促進

Urban Farmingで土いじりや植物の世話をすることで、幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」の分泌が促進されるといわれています。

土に含まれるバクテリアの一種にセロトニンを増やす働きがあるためです。セロトニンは不安やイライラを軽減させ、心を落ち着かせ、リラックスさせる効果があります。

（参照:「土」のなかのバクテリア。その意外な効能から自然とのふれあいの大切さを知る。)
（参照:The restorative benefits of nature: Toward an integrative framework)

植物から放出されるフィトンチッドでリラックス効果

植物には、摘発性有機化合物のフィトンチッドを放出する働きがあります。フィトンチッドはリラックス効果や免疫機能の向上が期待できる有機化合物です。

Urban Farmingでは植物に触れることによってリラックス効果が得られ、ストレスが軽減するといわれています。

（参照:フィトンチッドと森林浴について)

軽度の運動効果によるストレス軽減

農作業や植物の世話などは、軽度な運動になります。軽度な運動はストレスを解消し、心を安定させるホルモンのエンドルフィンとセロトニンの分泌を促すことがわかっています。

エンドルフィンは免疫向上やリラックス効果をもたらすなど、気分を良くする効能もあるといわれている物質です。

Urban Farmingで軽度な運動を習慣化することで、エンドルフィンやセロトニンが安定的に供給されるようになり、ストレスに強い心身をつくることにもつながります。

（参照:運動がメンタルヘルスに与える影響 | 医療法人社団 平成医会)

視覚的なリラクゼーション効果

緑豊かな環境や植物の色彩を見ることで、コルチゾールが減少しストレスが軽減することに加え、視覚的な疲労も和らげリラクゼーション効果があるといわれています。

緑を眺めると大脳皮質の活動が活発化するため、視覚疲労が解消されるというメカニズムです。パソコンでの仕事の合間にUrban Farmingを取り入れることで、目の疲れを回復させる効果が期待できます。

（参照:VDT作業における眼 精 疲労と中枢性ストレスの検 討)

栽培過程で得られる達成感と充実感

Urban Farmingでは、植物や野菜を育てて収穫したことで得られる達成感や充実感が、ストレス解消に役立つといわれています。達成感を感じると、脳内で快楽ホルモンと呼ばれるドーパミンが分泌され、気分が良くなりストレスを軽減してくれるからです。

また、達成感や充実感はポジティブな感情を生みやすくします。ポジティブな感情はストレスホルモンのコルチゾールの分泌を抑える働きがあるといわれています。

（参照:農業をこどもたちの憧れる職業に)

日帰りの農作業や単発的な農業体験だけでも、ストレス軽減効果は期待できるといわれています。特に、農作業に対して非日常を感じられる都市生活者は、その効果も高い傾向があるといいます。

一方で、農業体験イベントに参加するだけよりもUrban Farmingで定期的に農園に通っている人の方が、初期ストレス値が平均で40％低いことが検証されました。

Urban Farmingをライフスタイルに取り入れることで、情緒が安定し、ストレスや幸福度の状態が定着する傾向にあると考えられています。

（参照:農作業が人を癒す。ストレス社会で注目されるアグリヒーリングの可能性)

自然と触れ合い、農作業をすることでストレスホルモンが減少し、代わりに幸せホルモンの分泌が促され、リラックス効果や癒やし効果が期待できます。

ぜひ、心身に良い影響を与えてくれるUrban Farmingを取り入れて、都市生活でのストレス解消に役立ててみてはいかがでしょうか。
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