BLOG -SDGs and Sustainability

香港のUrban Farming|取り組む理由と実例を解説

Tuesday, 29 October 2024

中国の南海岸に位置し、260以上の島々で構成されている国、香港。亜熱帯気候で湿度が高く台風も多いことで知られています。そんな香港で今、都市部で農業を行うUrban Farmingが拡大しているのです。

その理由には、食料自給率が低く多くの食材を輸入に頼っている背景があります。今回は、香港がUrban Farmingに取り組む理由や実例を解説します!

香港がUrban Farmingに取り組む理由

2-香港のUrban Farming|取り組む理由と実例を解説.jpg

香港がUrban Farmingに取り組む大きな理由は、食料自給率の低さです。香港は食料の多くを輸入に依存しており、中でも野菜の輸入率は90%といわれています。

Urban Farmingを通じて地元での食料生産を増やし、食料自給率を向上させることが主な目的です。また、環境保護やコミュニティーの強化、子どもや若者に対する環境教育や食育の啓発、地元経済の活性化などもUrban Farmingに取り組む理由に含まれています。

香港の食料自給率が低いのはなぜ?

3-香港のUrban Farming|取り組む理由と実例を解説.jpg

香港の食料自給率が低い要因は多岐に渡ります。ここでは香港の食料自給率が低い要因を見ていきましょう。

限られた土地と高い地価

 

香港は限られた土地面積しかなく、その大部分は都市化されています。そのため、農業に適した土地が少なく、多くの土地が住宅や商業施設に使われているのが現状です。また、香港の地価は世界で最も高い水準にあり、農地としての利用が経済的に困難であるといわれています。

貿易を中心とした歴史的背景

 

香港は歴史的に商業と貿易の中心地として発展してきた背景があります。昔から農業よりも貿易や金融業が経済の主軸になっていることから、食料を生産するよりも輸入に依存する形が定着しているのです。

労働力の制約

 

都市部での生活や、他の産業が多くの労働力を吸収しているため、農業に従事する人が少ないのが現状です。また、農業を営むよりも他の産業で働く方が経済的に有利な場合が多いのも理由にあります。

気候と自然災害の問題

香港の気候や地形も農業に適していない部分も、食料自給率が低い理由のひとつです。
亜熱帯気候で台風や集中豪雨などの自然災害が頻繁に発生するため、農業にとって厳しい条件になります。

これらが香港の食料自給率を下げる主な要因になっています。

(参照:4.香港)

食料自給率の向上を目指す香港のUrban Farmingの実例

4-香港のUrban Farming|取り組む理由と実例を解説.jpg

さまざまな要因で食料自給率が低い香港ですが、状況を改善するため取り組まれているのがUrban Farmingです。実は日本より早くUrban Farmingの活動がスタートしているといいます。

人口750万人の都市で、どのようにUrban Farmingに取り組んでいるのか、2つの実例をもとに見ていきましょう。

プランターを活用した50カ所以上の屋上ファーム

 

香港では「Rooftop Republic Academy」という団体が、50カ所以上の屋上ファームを運営しています。合計55,000平方フィートにも及ぶ屋上ファームで、プランター栽培を実施。

軽量プラスチック製のプランターは、ビルの耐震状況を考慮して作られていて、オートメーションの冠水システムを採用しています。管理の効率化を図るため、テクノロジーを使って運用しているのも特徴です。

1月でも20℃を超える香港の温暖な気候を生かし、屋上ファームでは冬でもトマトやフェンネルなどの野菜が実っています。肥料は作物によって種類を変えており、国内のオーガニック専業農家と共同で野菜を育てるなどの活動も実施。

さらに聴覚障害者を都市農家として育成する活動や、栽培キットやプランターの販売、都市農場の経営や、都市農場学校の運営、飲食店との協業を展開するなど、多岐に渡る事業を行っています。

(参照:香港アーバンファーミング事情レポート)

アクアポニックを採用したインドアファーム

 

香港ではアクアポニックを採用したインドアファームを行う企業の実例があります。アクアポニックとは、魚の養殖と植物の水耕栽培を融合した栽培方法です。アクアポニックのタンクの中には魚が泳いでおり、魚のフンがそのまま野菜の有機肥料になるといいます。

驚くべきことに、装置はすべて手作りでネットで購入できる素材を使っているのもポイント。オリジナル素材やテクノロジーを多用しすぎるとコストがかかってしまうため、できるだけ安価でもシンプルな方法を導入し、拡張性を大事にしているといいます。

アクアポニックスを採用して50種類以上の野菜を育てており、スプラウトやハーブ、エディブルフラワーなどは、香港のトップシェフやミシュランシェフに認められ、レストランに供給されています。

室内で栽培するインドアファームの利点は、台風が多い香港でも安定的に供給できることです。環境に左右されずに栽培し、収穫できるインドアファームは、香港の食料自給率向上に大きく貢献しています。

(参照:香港 – アーバン・ファームを備えたコンドミニアムでグリーンライフを楽しむ)

今後も拡大が期待される香港のUrban Farming

5-香港のUrban Farming|取り組む理由と実例を解説.jpg

食料自給率が低く90%の野菜を輸入に頼っている香港ですが、Urban Farmingの取り組みを加速させることで食の生産システムを改善しつつあります。

また、輸入される野菜よりもUrban Farmingで育てた野菜の方が格段においしいという国民の声も上がっています。

香港の食料自給率を高め食生活を豊かにするためにも、今後もUrban Farmingは広がりを見せていくことでしょう。
あわせて読みたい: SDGs目標2「飢餓をゼロに」日本が取り組む農業支援とは?

Share

  • Facebook
  • Twitter
  • whatsapp
  • URLをコピー

BLOGのおすすめ記事

CLOSE

greengrowers

URLをコピーしました