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気候変動による漁業への影響|魚の分布・漁獲量の変化とは

Tuesday, 20 February 2024

気候変動による影響で、海洋環境やそこに生息する魚たちに大きな変化が見られています。日本の海では分布の変化漁獲量の変化が起きていますが、一体どのような状況なのでしょうか?

このまま気候変動が加速すれば、将来魚が食べられなくなる日も来るかもしれません。そこで今回は気候変動による漁業への影響として、分布の変化や漁獲量の変化、消費者への影響や私たちにできることを解説します!

気候変動による海洋環境の変化 

気候変動による漁業への影響を見る前に知っておきたいのが、海洋環境の変化です。魚の分布の変化や漁獲量の変化は、海洋環境の変化が原因となっています。ここ数年、気候変動によって海水温が上昇し続けており、海の温暖化が起きているのです。

日本周辺における2022年7月の海水温と過去30年の7月の平均値を比べると、海水温が2~4℃高い海域が増えていると報告されています。こうした傾向がここ5年ほど続いているのです。

また、海水温が上昇すると、海中に溶け込む酸素の量が減るといわれています。水中の酸素欠乏が進むと、当然ながら魚たちの生息環境にも影響します。

このような海水温の上昇が原因で、魚たちの生息域が変化していると考えられているのです。

(参照:海面水温の長期変化傾向(日本近海))
(参照:水温が高くなると、蒸発して大気に含まれる水蒸気が多くなるため、大雨が降りやすくなると考えられ、今後も温暖化によってさらに災害の激甚化が予想されています。)

気候変動による漁業への影響

気候変動による海の温暖化によって、魚の分布や漁獲量に変化が見られています。ここからは魚の分布の変化と漁獲量の変化について詳しく見ていきましょう。

魚の分布の変化

 

魚はその種に適した水温の海域に生息する性質があります。そのため、海の温暖化で水温が上がってしまうと、自分の種に適さない環境となってしまうのです。

例えばサワラはもともと温暖な海を好み、九州と瀬戸内海で多く生息していましたが、海水温が上昇したことで、北の地域での生息が見られるようになっています。

また、水温15~20℃を好むサンマは主に北太平洋に生息し、秋になると千島列島から日本列島の東岸付近を来遊するのが主流でした。

しかし、2010年以降にサンマが多く生息する常磐沖に暖水魂が発生し、黒潮の流れが変わってしまったのです。それによって日本列島近海の海水温が上昇した影響で、サンマは冷たい水温を求め、より沖合を来遊するようになったといわれています。

(参照:秋冬の味覚に危機?地球温暖化の影響と“地産地消”という選択)

漁獲量が減った魚と増えた魚がいる

海水温が上昇したことで魚の分布が変化し、漁獲量にも大きな影響を与えています。驚くべきことに、漁獲量が減少した魚がいる一方で漁獲量が増えた魚もいるというのです。

ここでは10年ほどで、漁獲量が減った魚と増えた魚をチェックしてみましょう。

【約10年で漁獲量が激減した魚】

・サンマ(北海道・根室)
2010年:47,537トン
2021年:10,480トン

・鮭(岩手県・岩手)
2010年:19,011トン
2021年:413トン

・サワラ(長崎県・長崎)
2012年:1,416トン
2021年:600トン

・寒ブリ(富山県・永見)
2011年:47,279本
2021年:11,013本

上記を見てわかる通り、ここ約10年で漁獲量が半数以下に減少しています。北海道の根室花咲港はサンマの漁獲量が日本一ですが、10年前に比べて3万トン以上減少しています。

減少の理由は、日本近海を来遊するサンマが減少したことが原因です。また、岩手県産の鮭の漁獲量は500トンを切り、漁業は大打撃を受けています。

【約10年で漁獲量が増えた魚】

・ブリ(北海道)
2010年 2,190トン
2021年 14,000トン

・タチウオ(宮城県)
2010年 1トン
2021年 500トン

・サバ(宮城県)
2012年5月 7トン
2022年5月 8,253トン

・トラフグ(福島県)
2010年 1,840キロ
2021年 27,839キロ

激減した魚がいる一方で、上記の魚は約10年の間に漁獲量が急増しています。サンマの漁獲量が減った北海道ではブリの漁獲量が急増し、10年前に比べて6倍以上となっています。

海水温の上昇が起きる前までは、日本の南に位置する長崎県や島根県などで多く見られていたブリですが、温暖化の影響で北海道に生息するようになりました。また、宮城県のサバは10年前と比べて約1,000倍、タチウオは約500倍と漁獲量が急増しています。

このような漁獲量の増加は、温暖化による魚の分布の変化によって起きています。これまで名産としていた魚が減少し、新たに漁獲量が急増した魚の登場に、各漁業や地域では新たな商品の開発やブランド化への取り組みが広がっています。

(参照:あの魚が食べられなくなるかも 温暖化で日本の海が激変!?)

消費者への影響

気候変動による海洋環境の変化や漁業への変化からわかることは、従来通りに安定して魚が食べ続けられるかわからないということです。

漁獲量が急増している魚もありますが、減少している魚に関しては、流通量が減っているため価格が高騰し、手に入る機会も少なくなってしまうかもしれません。地域によって魚介類の特産物も変わっていくなど、温暖化の影響は今後も続いていくと予測できるでしょう。

(参照:秋冬の味覚に危機?地球温暖化の影響と“地産地消”という選択)

魚を食べられる未来のために私たちができること

一部の魚の漁獲量は増えていますが、全体で見ると魚の漁獲量は減少しているといわれています。魚が食べられる未来のために私たちができることは、これ以上海水温の上昇が起きないよう、温暖化対策に取り組むことです。

地産地消の食材を選んで、輸送による二酸化炭素を減らすのも一つのアクションです。おいしい魚が食卓に並ぶ未来が続くよう、できることに取り組んでいきましょう。

(参照:不漁問題に関する検討会とりまとめ)
あわせて読みたい: 気候変動に関わるプラスチックのポイ捨て|原因と対策を考えよう

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